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巻頭企画天馬空を行く

 

言葉は後から付いてくるもの


ラグビーには古くから「ノーサイド」や「one for all, all for one」など、競技の精神を表す象徴的な言葉がある。2019年のワールドカップ中にも、日本チームの合言葉だった「ONE TEAM」が世間に広まり、同年の流行語大賞になった。田村氏自身は、プレー中に大切にしている言葉や座右の銘はあるのだろうか。

「個人的な座右の銘というのは特にないですね。僕たちは、目の前の試合や大会と正面から向き合って、しっかりと準備をして乗り越えていく、ただそれだけなんですよ。その様子を見た人たちが、後からいろいろな言葉を付けてくださるのかな、と」

それから少し間を置いてから、田村氏は続けてこう言った。
「自分にとっては、やるべきことをやっていく過程こそが、“ラグビー”そのものなのかもしれませんね」

全試合でベストパフォーマンスを

現在所属している「横浜キヤノンイーグルス」で、2022年1月には公式戦通算100試合出場も達成した田村氏。選手としてベテランの領域に入りつつある中で、これからどのように歩んでいこうと考えているのだろうか。

「僕はあまり先のことを見られる性格ではないので、まずは今シーズンに集中したいですね。キヤノンイーグルスで全試合、ベストなパフォーマンスを出すというのが直近の目標になってくるんじゃないかと思います」

先は見ず、目の前の試合に全力を尽くす――選手として愚直なまでに自らのパフォーマンスを追求するその哲学は、後進に対する姿勢にも表れている。

「若い選手にアドバイスをするとか、背中を見せるとか、そういうことも考えていないです。僕はただラグビーをやっているだけで、そこに魅力を感じた方が応援してくださるのかなと。だからこそ、僕は自分が良いプレーをすることしか考えないし、そういう意味では“自己中”なのだと思います。それに、僕が何かをしなくても、後進の中に影響力や魅力がある選手がいれば、自然と皆が見るようになるので、それでいいんです」

一選手の立場を貫き、ラグビーにのみ集中する田村氏。最後に、そんな同氏が今感じているラグビーの魅力について、あらためて語ってもらった。

「ラグビーは理不尽なスポーツで、ルール的にも意味がわかりにくい部分が多々あると思います。でも、それを守りながら、いろんな国籍、体形、性格の選手たちが1つのチームにまとまって、勝つために同じ方向を向いて頑張っている。15あるポジションも一つひとつ役割が違うし、この多様性は他にないでしょう。そのユニークなおもしろさを、スタジアムではきっと皆様にお見せできると思うので、ぜひ足を運んでいただきたいですね」

(取材:2022年12月)
取材 / 文;鴨志田 玲緒
写真:竹内洋平

CLUB PROFILE
 
横浜キヤノンイーグルス
1980年に創設され、2010年に「イーグルス」の愛称が定着する。ホストエリアは横浜市、セカンダリーホストエリアは大分県。2012年にトップリーグに昇格し、2022年に新たに開幕した「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」では1部リーグで6位の成績を収める。エンブレムカラーの白はチームの理念である「尊敬・尊重」と「規律」を、赤は「情熱」を表し、中央で羽ばたく鷲は「勝利に向けて飛躍する意志」を表現している。
 
URL https://www.canon-eagles.jp/

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