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コラム

Special Voice 株式会社 ヴァリオス 代表取締役 清水 正也

株式会社 ヴァリオス
代表取締役
清水 正也

 

コロナ禍や低迷する日本経済、戦争や環境問題など、混迷する現代社会において、各分野で挑戦を続け、わが道を歩んでいる方々の言葉を通して、一歩を踏み出したい読者の背中を後押しする企画。第8回は、運送やIT、飲食などさまざまな分野で着実に実績を残し続ける清水正也氏に、人の流動性を鑑みた事業の展望や、M&Aを成功に導く思考法など、豊富な経験を基にした哲学や思いを語ってもらった。

 
――まずは、清水社長の現在に至るまでの歩みを簡単にお聞かせください。
 
ドライバーとして経験を積んだ後に31歳で独立しました。現在では数十名ほどの従業員を迎え、日々研鑽に励んでいます。今日に至る過程では、労働集約型である配送ビジネスに売り上げの限界を感じまして、「モノ」だけではなく「サービス」も運べる業態にしようと、(株)アンビタスという別会社を設立してキッチンカー事業に挑戦しました。通常、キッチンカーはイベント会場や商業施設に出店することが多いのですが、私の場合は団地や集合住宅、スイミングなどの習い事の場に出店していたんです。メニューもたこ焼きのような屋台料理ではなく、肉じゃがやカレーといった、ご家庭の夕食にプラスになるようなものを提供していました。他には、IT・IOTを駆使した運送業態の基盤をつくるなど、新しい技術を他の分野に流用して効率化を図りたいという思いから、IT関連事業を手がける(株)アブーソリューションズも運営しています。
 
――運送業を手がけるうえで、最も心がけていらっしゃる点は何でしょうか?
 
従業員と共有しているのは、「見えているもの以上を運ぶ」ということです。ただ荷物を運ぶだけではなく、明るくあいさつしたり、笑顔でコミュニケーションを取ったりと、真面目さや誠実さを常に持つことを大事にしています。
 
 
――清水社長はこれまで、M&Aも数社手がけているとうかがいました。
 
ええ。当社の主体である運送事業は汎用性があるため、例えば自社商品を所有する企業様をM&Aで購入し、その自社商品を当社で配送するといった業務の内製化も行いました。すると、これまで外部に委託していた配送を自社で担えるので、コストを抑えられて黒字化がしやすく、相性が良かったんです。また、これまでにはダンプ事業を手がける企業様のM&Aも行っておりまして。このケースでは、土砂などの資源を調達する山を自社で購入して発注側を担うことで、負担であった稼働費用を人件費のみに抑え、約3倍の利益率向上に成功しました。M&Aは初めからリソースがそろっている状態から事業を始められますし、書類的な負担も少なく、既存の自社事業との相乗効果も生みやすいのが特長です。今後は売却側に回る前段として、運送業界の諸問題も踏まえ、「無人で価値が提供できる事業形態」を新たに模索する予定です。
 
――「無人で価値が提供できる事業形態」への挑戦を決められた背景についても、ぜひ教えてください。
 
これからの時代は、人材の流動性に耐えられなくなる企業が多くなると考えています。特に運送は人の出入りが激しい業界で、大手でさえ退職率が高くなっているんです。従業員の熟練度も経験の差によって振り幅があるため、単純に「1人いなくなったら、1人埋めればいい」という問題ではありません。そうした人材の流動が不安定な事業だからこそ、無人形態で成立する新たな挑戦をしたいと感じました。その第一歩目として、トレーニングジムの運営を計画しています。人の体というのは、今後何年経っても変わらず、健康を維持するためのマネジメントが欠かせませんよね。そのため、流行り廃りで消えることなく、むしろ成長していく業態だと思い着目しました。トレーニングジムの運営が軌道に乗れば、今度は洗車場やイタリアン料理の冷凍販売所といった他の分野にも挑戦していき、裾野を広げた先で、運送業の従業員全体の待遇をさらに良くしていきます。
 
――共に働く皆さんへできる限り還元したいという思いがあるのですね。
 
私に限らず、どのような分野の経営者も、「従業員に恩返ししたい」という考えに行き着くと思っています。ただ、単純に給料を上げるというのではなく、週休3日制にしたり、長期休みを増やしたりといった形でも、従業員の幸福度を上げていきたいですね。そうして皆が自由に伸び伸びと働けるようにするには、やはり会社自体に体力が必要です。だからこそ、着実に業績が伸びている自社の様子を皆に見てもらい、前に進むためのビジョンを共に思い描いていけたら嬉しいです。
 
――すべての事業において、一貫されている価値観はありますか?
 
私が事業展開のうえで最も大切にしているのは、「戦略的逆行」という考え方です。これは端的に言うと、「大多数の人が共通して考えるであろう選択とは反対に、あえて戦略的に逆の方向に進む」ということ。例えば前述したキッチンカー事業においては、多くの方がイベント会場への出店が通例だと思うところを、あえて集合住宅などでの出店に舵を切り、それが功を奏して「家庭での負担を軽くできる」と喜んでいただけました。加えて、M&Aで所有したダンプ事業も、ただ資材を運ぶだけだったところに、大本の資材源である山を購入することで稼働費を抑え、数倍の黒字化を実現しています。このように「一般的には進みづらい道を戦略的に選択すること」が、大きな利益を生み出すんです。
 
――事業を成功に導く秘訣は?
 
重要なのは、自分の頭の中で、選択肢や思考するための材料を増やしておくことだと思います。そのためには、常に考え続ける姿勢が大切です。戦略を煮詰める作業を何週も繰り返して、足りない部分は勉強で埋めていく、その継続こそが力になります。何より大切なのは、頭の中で考え抜いた戦略を実行に移す覚悟です。失敗は誰もが何度も経験すること。ですから、恐れずやり通す覚悟が、自然と目標実現の力になると感じます。
 

清水 正也
 
酒類小売会社を経てドライバーとして経験を積んだ後、31歳の時に独立。(株)ヴァリオスを設立し、現在では延べ50人のドライバーと共に事業を成長させている。並行してキッチンカー事業を中心に手がける(株)アンビタスと、IT関連事業が主体の(株)アブーソリューションズをグループ会社として展開。その過程ではダンプ事業会社やペットフード会社など、幅広い分野でM&Aによる事業再生を成功させる。近年では無人形態での多様な事業運営の第一歩として、トレーニングジムの運営も計画。一般的な価値観とはあえて反対の道を探る「戦略的逆行」の精神を胸に、新たな挑戦を続けている。

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