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コラム

編集部のおすすめスポット探訪記 Report:2 石川酒造
訪れることでリフレッシュできる、あるいは仕事に生かせるヒントやアイデアが得られるスポットを紹介する連載企画。第2回となる今号では、都内有数の由緒ある酒蔵「石川酒造」をご紹介したい。石川酒造はJR拝島駅から徒歩20分ほどの場所にあり、都心からのアクセスもスムーズな「酒飲みのテーマパーク」として人気を博している。現在はレストラン、ゲストハウス、酒造見学ツアーや感謝デーの開催など多彩な施設やイベントが目白押しだ。1863年の創業以来、脈々と受け継がれてきた酒蔵の歴史やそこに込められた思い、施設の楽しみ方などについて、広報・デザイナー担当の石川雅美氏にお話をうかがった。

 
――最初に、石川酒造さんが創業されてから現在にかけての、簡単な変遷をお聞かせください。
 
石川 江戸末期、1863年(文久3年)に当酒蔵は創業され、日本酒造りを始めました。創業元の石川家は代々、村の名主役として農業を中心に手がけていたのですが、欧米文化の流入による時代の混迷に伴い、これからも家を守り、生き抜いていくために農業以外の柱が欲しいと考えて日本酒製造を兼業したのだと言われています。そして、現在の人気銘柄「多満自慢」の前身である「八重桜」が誕生したんです。やがて文明開化が起こり、日本国内でも本格的にビールの製造が開始されました。その流れに乗じて当酒蔵でもビール製造に挑戦をしたものの、時期尚早だったことから、3年の試行錯誤の末に断念をしたんです。しかし、1994年の法律改正を皮切りに、当時の技術や先代の思いを再燃させようと、1998年にビール醸造を復活させ、代表銘柄「多摩の恵」が誕生しました。同年のレストラン創設を機に敷地内を整備しつつ、多くの方にご来場いただけるよう、多様な取り組みを続けています。
 
――お酒や料理、景観巡りなど多彩な楽しみ方がある石川酒造さんですが、主にどのような年齢層の方が来られるのでしょうか?
 
石川 当酒蔵では、日本酒が好きな方以外でも満喫していただけるように、間口を広くとって、さまざまな施設やレジャーをご用意しています。そのため、昔からの日本酒好きの方はもちろんのこと、主婦の方やご家族連れの方、若い女性の方も多く来られるんです。米軍基地が近いこともあり、海外の方も勉強や観光の目的でいらっしゃいます。10代から70代まで、誰でもお気軽にお越しいただけるかたちを整えているんですよ。
 
――現在、「感謝デー」などのイベント開催時のみに開催されている「酒蔵見学ツアー」。こちらは、どのような内容なのでしょうか?
 
石川 基本は、日本酒をこれから好きになっていきたいという方向けに、「日本酒が日常に入り込むような存在になってほしい」「日本酒業界全体を盛り上げたい」という目的のツアーになっています。酒蔵を回り醸造の工程を見ていくのですが、石川酒造のお酒がどうこう、というよりは、「スーパーで買うならこういう日本酒がおすすめです」「友人や知人と飲みに行く時はこんな銘柄を選ぶと良いですよ」というような感じで、日常的に使える豆知識なんかを中心にお伝えしているんですよ。また時折、日本酒醸造の責任者である杜氏や二番手の頭役と一緒に酒蔵を回り、より日本酒のディープな内容をお届けする特別ツアーも企画しています。
 
――「感謝デー」については、毎月第四週の土曜日、それにつながる日曜日と祝日にかけて開催されているイベントだそうですね。
 
石川 はい。「感謝デー」では、いつも支えてくださる地域の皆様に日頃のお礼を込めて、野外マルシェなどの特別な催しものをご提供しています。なかなか販売されていない日本酒を樽から直接量り売りしたり、普通は熱を入れて出荷するビールをあえて生の状態で販売したりと、お酒好きにはたまらないレアなお酒を堪能していただけるんですよ。その他にも、地域のパン屋さんと共同でつくった酒粕入りのパンや、酒まんじゅう、限定のオードブルなど、多彩なお料理を堪能していただけます。お酒好きも、そうでない人も、皆をおいてきぼりにせず、心おきなく楽しんでいただけるようなイベントになっているんですよ。
 
――「多満自慢」やクラフトビール「TOKYO BLUES」など、石川酒造さんの代表的な銘柄を語る際に欠かせない特長は何ですか?
 
石川 当酒蔵のコンセプトは、「華やかな食卓を、陰で支える酒造り」です。これは、先代から続く方針として受け継がれています。例えば話題になる日本酒であれば、その銘柄を飲むためにお店に行くと思いますが、私たちが造る日本酒は、毎日の何気ない食卓のお供として飲んだ時にご飯がおいしいと感じていただけることを大事にしているんです。結婚式のようなイベント事で乾杯した時にも、私たちの造ったお酒ではなく、お酒をお供に場がにぎわい、「あの結婚式楽しかったね」と言っていただけるようなアイテムとして、皆様に飲んでいただきたいという思いがあるんです。
 
――10月中旬には、毎年恒例の新酒も発売されるそうですね。
 
石川 ええ。10月半ばごろには決まって、「『多満自慢』さらさらにごり」と「『多満自慢』あらばしり」という2種類の日本酒を発売しているんです。これはボージョレ・ヌーボーのようなイメージで、その時期恒例の特別なお祝いとして楽しんでいただけるお酒になっています。本来日本酒において「雑味」と捉えられがちな部分を「うま味」として生かした、しぼりたての、季節ならではの味わいになっているんですよ。
 
――そうした独自の発想を次々と実現されていくうえで、大切にされている思いとは何でしょうか?
 
石川 何より大切にしている価値観は、「時代や周囲の流れに逆らわないこと」です。新しいチャレンジに対して過度に意気込まずに、時代の流れや周囲の変化に応じて、その都度必要な挑戦をする、という姿勢ですね。例えば、石川家が日本酒を造り始めたのも、農業との兼業を迫られての挑戦でした。やがて日本酒醸造をメインの事業として展開し始めたのも、戦後の農地解放の動きがあり、農業地を国に返還する必要に迫られたからなんです。そんなふうに、一つひとつのタイミングが訪れた際にそれに合わせて、どう生き残っていくべきかを考え、流れに任せるように挑戦を続けてきたんですよ。また、近年のコロナ禍の際にも、パウダーの甘酒やかす汁、サイダーといったお酒以外の商品を増やしたり、SNS上で他の酒蔵との交流を図ったりと、その時にしかできない取り組みを続けていました。
 
――時代に合わせた挑戦や取り組みと言えば、石川酒造さんのSNS上の発信も大変魅力的で、心の温まる言葉が多いですよね。
 
石川 ありがとうございます。SNSからの情報発信は主に、私が担当しているのですが、自分の中のルールで、「細かいペルソナを定めず、皆に優しさを与えられる」ことを意識しています。例えば、年齢や家族構成で細かく設定してしまうと、Aさんにとっては良い発信でも、Bさんにとっては悲しい思いをさせる発信になってしまうこともあると思うんです。だからこそ、皆に配慮した、全員が笑顔になれるような言葉を意識していますね。
 
――最後に、今後来訪されるお客さんに向けたメッセージをお願いします。
 
石川 当酒蔵ではさまざまな楽しみ方をご用意しているので、とにかく好きなように楽しんでいただけたら、それが何よりも嬉しいです。そして、その楽しんでいる様子を見た方も、一緒に楽しい気分になるという「幸せの輪」が広がる空間をつくっていけたらと思います。皆で一緒に、日本酒やビールを楽しみましょう!

取材・文:木村 祐亮
写真:坂本 隼

Focus!
地域の交流場でもある、施設内のイタリアンレストラン「福生のビール小屋」。ビールにピザ・ソーセージといった王道のコンボはもちろんのこと、チーズたっぷりクワトロピザやカルパッチョに大吟醸を組み合わせるのも、非常におすすめなのだとか。「発酵食品に発酵食品を合わせるととても相性が良いんです」と、石川雅美氏も太鼓判を押す絶品コンボである。木目調のインテリアに四方から当たる木漏れ日がとてもおしゃれな雰囲気を演出していて、家族でのランチ、女子会やデートにも最適だ。
インハウスデザイナー / 広報
石川 雅美
 
女子美術大学短期大学部を卒業後、石川酒造株式会社のレストラン部門を担う石川麦酒株式会社へ入社。その後、デザインの技術を見込まれて石川酒造へ出向。直接お客様の声を聴くことができる接客の経験を生かし、インハウスデザイナー兼広報として働く。
 
石川酒造 株式会社
【所在地】〒197-8623東京都福生市熊川1番地
【TEL】042-553-0100
【営業時間】平日 8:30~17:30
【URL】 https://www.tamajiman.co.jp/
※「福生のビール小屋」「酒世羅」などの併設施設については営業時間が異なります。

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