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コラム

編集部のおすすめスポット探訪記 Report:1 タイ仏教瞑想センター
訪れることでリフレッシュできる、あるいは仕事に生かせるヒントやアイデアが得られるスポットを紹介する連載企画。第1回となる今号では、瞑想にまつわる施設をご紹介したい。Google、Apple、ゴールドマン・サックスなど世界的な企業が社員研修に取り入れている“瞑想”。ストレスの軽減、集中力・睡眠の質の向上など、その効果はビジネスマンにとって嬉しいものばかりだ。数年前からブームともなっており、「興味はあるがやり方がわからない」という読者も多いのではないだろうか。そんな方におすすめしたいのがJR三河島駅から徒歩5分の場所にある「タイ仏教瞑想センター」だ。同センターでは日本人向けに瞑想会が開かれており、タイ人僧侶から直接、瞑想の指導が受けられる。日本にあるタイ仏教寺院・タンマガーイ寺院の僧侶で、瞑想の指導にもあたるロンピー・ソムキャットにセンターの活動内容や、瞑想についてお話をうかがった。

 
――まずは「タイ仏教瞑想センター」で実施されている瞑想会について、種類や内容をお聞かせください。
 

ロンピー 当センターでは毎週末に「心をリセットする瞑想・法話会」を開催しています。こちらのセッションでは、僧侶である私が仏教の考え方や瞑想のやり方をお伝えした後、参加者の皆さんと一緒に瞑想を行います。瞑想中も私がしっかりとガイドするので、初心者の方でも安心してご参加いただけますよ。月に1回は日本人ボランティアが瞑想の指導を行う「入門コース」も開催していますので、“まずは日本人からきっちり指導を受けたい”という方はこちらから始めてみてください。いずれも参加費はいただいておりませんが、もし本センターの活動にご協力いただけるのであれば、お気持ち程度でお布施をいただければ幸いです。
 
――オンライン瞑想会も開かれているとうかがいました。
 
ロンピー そうなんです。コロナの流行をきっかけにZoomを使った瞑想会を始めたところ好評だったため、現在まで続けています。オンラインでは、土曜日の20時から21時までは瞑想と法話のセッションを、毎日21時から21時半までは「おやすみ瞑想」と題して瞑想のみを行っています。「おやすみ瞑想」は仕事をしている方でも参加しやすく、毎日のルーティーンにしている方もいらっしゃるんですよ。
 
――瞑想は毎日続けることが重要なのですよね。
 
ロンピー ええ。1回あたりの時間は、5分でも10分でも構わないんです。心を休める時間を毎日取ることが大切なんですよ。私は瞑想を「心のための最高の休息時間」だと思っています。日本社会で生活する皆さんは、仕事に対する不安や心配事、あるいは家族に対する責任を常に抱えていらっしゃいます。真面目な国民性もあって、ストレスが非常に多い生活なんですね。瞑想というのは、不安や責任などといった精神的な重しをすべて手放して、自分の内面に集中することで、心をリラックスさせる、つまり、「サバーイ」な状態にすることです。「サバーイ」とは、タイ語で「快適・気楽」などという意味で、タイ人の多くはこの「サバーイ」という考え方・生き方を大事にしています。ですから、タイ人はとても楽観的なんですよ(笑)。
 
――「サバーイ」は、プレッシャーやストレスを抱えて働く日本のビジネスマンにとって、何よりも必要な考え方なのかもしれません。
 
ロンピー そうですね。実は私は以前、タイの日系企業で2年間、エンジニアとして働いていたんです。その企業の研修生として何度も日本に足を運ぶうちに、日本の文化や国民性に強く引かれるようになりました。その後、先輩僧侶からの誘いもあって日本に留学することを決め、東京大学の大学院で10年間、インド哲学仏教学を学んだんです。日本で生活する中で、日本人は多くのストレスを抱えていることに気が付きました。仏教の考え方や瞑想を広め、少しでも日本の皆さんの心を軽くできればと思い、この活動を続けています。
 
――昔から日本との関わりを持っておられたのですね。日本語がご堪能なことにも納得です。瞑想会にはどのような方々がいらっしゃいますか?
 
ロンピー いろいろな年代・業種の方がいらっしゃいます。会社員、経営者、士業の方々、大学の先生、心理療法士、デザイナーなど、本当に多種多様な業種の方が来られますね。年齢も20代から70代までさまざまです。
 
――参加者の中には、長く瞑想を続けている方もいらっしゃると思います。瞑想の効果を実感しておられる方も多いのではないですか?
 
ロンピー サラリーマンの方で、人間関係に良い影響があったとおっしゃる方は多いですね。瞑想を続けると感情がコントロールできるようになるので、苦手だと思う相手ともうまく付き合えるようになるんです。また、企業の人事部で働いていたある女性は、瞑想を続けることで、「それぞれの社員が何を望んでいるのかはっきりとわかるようになり、仕事がうまく進むようになった」とおっしゃっていました。皆さん、仕事への良い影響を実感されているようですね。
 
――素晴らしいですね。スティーブ・ジョブズが瞑想を好んだことは有名ですが、経営者など企業のリーダー層にとっても瞑想は有効なのでしょうか?
 

ロンピー はい。人を導く立場にあるリーダーの方々には、決断を迫られる機会が多くありますよね。自分の決断が社員たちの未来に影響を与えるわけですから、非常に大きなプレッシャーがかかります。そうした大きな決断をする時、人は自分の判断が正しいかどうか、非常に迷ってしまうんです。当然、不安にもなってしまう。それはまるで、物が散乱した部屋にいて、どこに何があるのかまったくわからないような状態です。そんな状態では、正しい判断はできません。瞑想というのは、散らかっている自分の考えを整理して、心をクリアにする時間です。心を落ち着け、不安のない状態にすれば良い決断ができますし、新しいアイデアも自然と浮かんでくるんです。
 
――過酷な状況に置かれている方にこそ、瞑想が必要ということですか?
 

ロンピー その通りです。経営者やビジネスマンとして日本で働く方々の多くは、「自分が一生懸命働いて努力すれば結果が出る」と考えていらっしゃいます。熱心に働く日本人の気質は素晴らしいです。でも、心を休めないまま働いていると、蓄積された不安やストレスで思考が鈍くなってしまいます。そんな状態で頑張り続けても、きっと成果は得られません。効率的に仕事を進めるためにも、瞑想をして心を休めてみてください。瞑想は難しいものではありません。どこでも、無料でできます。1日に1分でも構いません。忙しいからこそ、一度立ち止まり、瞑想をして心を休める。そうすれば、皆さんの求めているものが自然と現れてくるはずです。

取材・文:坪井 萌子
写真:坂本 隼

Focus!
週末の瞑想会では、ロンピーが画面にスライドを映して、瞑想する際の姿勢や心構えなど、基本的なことから教えてくれる。「本来、瞑想にマニュアルは必要ありません。すべてを手放し、ただただリラックスしてほしい」と語ってくれたロンピーだが、瞑想に初めて挑戦する日本人にとって、これはありがたい心遣いだ。また、日曜日の瞑想会の後には、タイ人スタッフ(元シェフ)お手製のタイ料理がランチとして振る舞われる。温かいスタッフとおいしいタイ料理が迎えてくれる本センターは、まさに瞑想初心者にうってつけの施設だ。
タンマガーイ寺院僧侶
ロンピー・ソムキャット
※「ロンピー」はタイの若い僧侶に対する敬称
 
タイの大学を卒業後、エンジニアとして日系企業に就職。97年から10年にわたり、東京大学の大学院でインド哲学仏教学を学ぶ。その後、タイに戻り出家。以来16年間、タンマガーイ寺院僧侶として、仏教の考え方や瞑想を広めるべく精力的に活動している。
 
タイ仏教瞑想センター
【所在地】〒116-0002 東京都荒川区荒川3-78-5
タイ国タンマガーイ寺院 4階
【TEL】03-5604-5727
【営業時間】13:00〜20:30(月曜定休日)
【URL】 https://thaimeisou.jp/

 
 
 

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