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コラム

目の前の助けることのできる命を救いたい ~愛護活動で知るペットに対する想い~

人の生活に深く関わり、時にペットという領域を超えて“パートナー”として人生を彩ってくれる「犬」。たくさんの人に愛される存在である一方、その陰では捨てられて保健所送りになったり、ペットショップの繁殖場で不要とされたり、人間の都合で殺処分されてしまう個体が数多くいる。当コラムでは、トリミングサロンを運営しながら保護犬活動に力を入れる(特非)Happy Wan の原弥千代氏が、保護犬活動の実態や支援の必要性についてリアルな情報を発信していく。

(特非)Happy Wanの原弥千代と申します。2022年7月号からコラムを担当させていただいております。4回目にあたる今回のテーマは、繁殖犬として利用された子たちの現状についてお話しさせていただきたいと思います。

繫殖制限について

2021年6月1日より施行された動物の愛護及び管理に関する法律で、繁殖制限が定められました。その中には下記のような記載があります。

「雌犬の生涯出産回数は6回まで、交配時の年齢は6歳以下。ただし、7歳に達した時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は、交配時の年齢は7歳以下とする。※」

6歳以下で6回までということは、1年に1回は出産させても良いということになります。個人的にはこの法律は『母体』のことをまったく考えていない法律と言えると思っています。繁殖場からレスキューする雌犬の年齢は推定でしかありませんが、7歳~8歳頃と判断した場合、当団体で避妊手術を実施します。そうした子のほとんどに見られるのが、子宮の組織が外傷や炎症によってくっついてしまう『子宮癒着』という症状です。その他にも、『乳腺腫瘍』や『子宮内膜症』といった病気を抱え、体内が悲鳴をあげている状態の子は数多く存在しています。そこまでしてお金儲けのために繁殖をする必要があるのでしょうか?動物愛護のための法律が施行されたといっても、その内容は動物の体や健康をしっかりと守り切れるものにはなっていません。その結果、悪徳な繫殖屋が動物の命を命とも思わずに、道具として利用している現状が解決されず、病気で苦しむ子を増やし続けています。

母体を無視した繁殖の結果

当団体でレスキューした子の中には、明らかに神経に異常のある子がいます。その子はトイプードルでとってもかわいい顔をした2kgの子です。仮名を『キンパ』と名付けました。当団体にやってきた時は覇気のない表情を浮かべ、ふらついており、体や尻尾の脱毛、歯周病の進行、癲癇の症状など、明らかな疾患が複数あるとわかりました。病院での検査結果は『甲状腺機能低下症』という病気で、同時に視力低下や失明を招く『網膜萎縮症』という症状や、筋力の低下なども見られたのです。『甲状腺機能低下症』のせいで麻酔に対するリスクがあり、抜け歯や口内環境の処置をしてあげたくても、しばらくは手術も行うことができず、投薬にて『甲状腺機能低下症』の治療を行っていました。

キンパの手術が可能になったのは、検査から約2ヶ月後のこと。容体が安定してきた頃に避妊手術や抜歯等の治療を行いましたが、やはり子宮の癒着はひどい状態で、お腹には帝王切開の傷跡もありました。繁殖に利用された時に自然分娩が行えず、帝王切開されてできた跡だと考えられます。弱っていたレスキュー時の様子から察するに、その後も適切な治療をしてもらえないまま、ずっと苦しんでいたのだと感じました。

レスキューしてから半年以上が経過したタイミング、そして今回のコラムが掲載される時点でのお話ですが、いまだにキンパを迎え入れる新しい家族は見つかっていない状態で、当団体では今も望みを捨てずに家族探しを行っています。その間、キンパは吠えることも他犬と遊ぶこともない時間を過ごしていると思うと胸が痛くなります。現在はずっと『甲状腺機能低下症』の治療と『抗てんかん剤』の服用をしており、数ヶ月に一度の血液検査で経過観察をしながら見守っています。

ただ悪いことばかりではなく、まったく意志表示をしなかったキンパが名前を呼ぶと時折、尻尾を振り返してくれるようになりました。毎日名前を呼び、声を掛け続ける最中、突然尻尾を振ってくれた時は心の底から喜びました。毎回名前を呼んだ時に尻尾を振ってくれるわけではないので、名前を呼ぶ楽しみにもなりました。さらにここ最近は、怒ることを表現できるようにもなりました。例えば、ブラッシング時に引っかかってしまったり、気分が乗らない時になでまわされたりすると、うなって自分の感情をアピールします。

キンパにとって、以前の場所より当団体の方が環境は良くなったかもしれません。キンパ自身は今の環境に対してどんな気持ちでいるのか・・・と思うことも多々ありました。しかし、こうして尻尾を振ってくれたり感情を表してくれたりと、さまざまな変化が出るとキンパなりに頑張っているのだと感じることができます。また、次の変化が楽しみにもなり、いつか他の子たちと同じように歩き、普通の生活ができるようになるのではないかと、私たちも望みを持つようになりました。

病気を抱えている子の保護

レスキューした子たちについて、「このまま家族が見つからない時はどうするのか?」という質問を受けることがあります。家族が見つからなければ、私たち保護団体が責任を持って最期までお世話をするだけのことです。時には余命数ヶ月の子でも保護して家族の代わりとなり、命が尽きるまで最善を尽くし、看取る覚悟の上で保護をしています。そのように、保健所のような冷たいコンクリートの上や、繁殖場の不衛生な環境で最期を迎えさせたくない一心で、多くのボランティア団体は活動しています。

このコラムを読んでいただき、私たち愛護団体と一緒に命を救う活動へご協力いただける方が1人でも多く増えることを願います。

関心を持って下さった方は一度、お近くの愛護団体を探し、その団体が必要としているご支援で協力していただけると嬉しいです。

※引用元:環境省ホームページ「動物愛護管理法の飼養管理基準に関する省令」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r030601_1.pdf

■プロフィール
原 弥千代
 
甲子園球場のショップに販売されていた犬用の服に一目ぼれし、犬を飼い始める。絆を深めいつも一緒にいたいと思うようになったため、不動産会社を退職し2010 年にトリミングサロン「dogparadise Cocoe」をオープン。3店舗まで事業を拡大する。2020年には(特非)Happy Wan を設立し、大阪府枚方市を拠点に犬の保護活動をスタート。トリミングサロンの店舗スペースを活用した保護を行いつつ、多くの人に「自分にできる範囲での支援」を呼びかけ、着実に活動の幅を広げている。

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