一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム19

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第19回は前回から引き続き、海外で生活・仕事をして初めてわかること、実感できることについてご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、このシリーズでは皆さまから特にご要望が多かったタイ国関連のコラムから始まり、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と連載を続けております
前号では、実際に海外で生活・仕事をしてみて初めてわかる大変さや、実感できることについて、タイを例に挙げて仕事編を述べました。今号ではタイ日常生活編について述べてまいりたいと思います。

① スーパーマーケット

タイでは、路上の屋台やローカル市場(タラ―ト)、ローカルスーパーから輸入品を多く扱う高級スーパーまでさまざまなスーパーマーケットがあります。スーパーマーケットのほとんどに共通しているのは、商品管理・品質管理があまり行き届いていないことです。自分が購入したい商品が見つからない時、店員に聞いても即座に「ありません(マイミ―)」という言葉が返ってくるケースが多くあります。日本人からすると、あまり親身に対応してもらえていないと感じることも珍しくありません。それでも自分で頑張って商品棚を探せば、ちゃんと購入したい商品が高確率で置いてあります。また、アイスクリームの塊などがフロアに落ちていても、店員はそれをまたいで通り過ぎる、という光景もしばしば見かけます。商品をたくさん購入し、レジで袋に入れてもらう際にも、重いものを先に詰めるといった気配りが足りないキャッシャーがほとんどです。

②電車・地下鉄・高架鉄道

私の仕事・生活の拠点があるバンコクでは、電車や地下鉄に乗って移動することが多いのですが、どちらもほぼ5、6分間隔で電車が来ます。2022年頃までは、改札を通る際にセンサーが敏感に反応したり、ものすごい圧力でゲートが閉まったりという問題があり、私も何度となくゲートに腰骨のあたりを挟まれる日々を過ごしていました。幼児や高齢者の方などへの配慮よりは、何かあれば絶対に人を通さないという点を優先しているのだと感じます。

続いては、電車や地下鉄への乗り降りについてです。ほとんどの駅には、改札口からホームまでエスカレーターが常設されており、エスカレーター上での歩行が禁止されています。しかし実際には日本同様、エスカレーターの右側に立ち止まって、左側は歩いて上り下りをする人用の通路のようになっているのです。また電車に乗る際には、ひどい時は乗る人が先で、降りる人が後になるケースもあります。時間の観念が日本人よりもゆっくりしている印象のタイ人ですが、こうした細かな部分では非常にせっかちな人が珍しくありません。

③一般車両・タクシーなどの道路交通状況

タクシーについては、まずほとんどの一般タクシーの運転手は英語が十分に通じません。そのせいか行き先や進路を伝えても、顔の表情を変えず、何も言わない運転手が多いのです。運転も荒々しく、夜間や雨が降っている場合は乗車拒否もしばしば見受けられます。またレストラン街や繁華街で停まって待っているタクシーは、メーターが付いていても料金交渉制ですし、ダッシュボードに付いている写真と実際の運転手が別人ということも珍しくありません。

バンコクの大きな一般幹線道路の1つであるスクンビット通りや、ラマ4世通り、アソーク通りなどでは日夜激しい渋滞が発生しています。バンコクの渋滞は日本の渋滞と違い、車がまったくと言っていいほど動かなくなります。自動車産業の発展による車両台数の激増に、都市・道路計画の再整備が全く追いついていないことの影響が大きいのです。まず幹線道路であっても片側2車線、3車線しかありません。大きな交差点ではいったん赤信号になると停まる時間が長いうえに、我先にと強引な運転をする人も多く、最悪の場合は逆走するバイクや車両なども出てきます。

④アパート・コンドミニアム

筆者は5年程前から、バンコク中心部より北の、ペッチャブリー駅の近くにある大型コンドミニアムにオフィス兼の部屋を設け生活拠点としています。ペッチャブリー駅はバンコク・スワンナプーム空港に30分程度で行けるエアポートリンクの駅とも交差していて、交通の便は良いところです。朝夕の出勤退勤時には大量の乗客を乗せ、まるで日本のテレビ番組「世界の車窓から」をほうふつとさせるような、東南アジアの風情がある場所だと思います。問題は、首都の中心エリアの1つのため、バンコク市内でも有数の空気の良くないエリアであることです。大渋滞や車両の排気ガス、加えて高温の日々が続くといった問題も生じます。

コンドミニアムの自宅に入るまでには4ヶ所の顔認証が必要で、治安的な問題はありません。しかし、いざ自宅内はというと、水道の蛇口の中の網にはすぐに細かい石やセメントカスがたまったり、天井のLEDライトの球がなぜか不安定に点滅したりなどの問題が生まれやすい状態です。また高層階に近いにもかかわらず、どこからともなくハエや蚊、蛾からアリまで舞い込んできます。電化製品も日本の製品と比べると寿命が短かったり、外気の汚れが大量に付着したりと、いろいろな面で気を使わなければなりません。

⑤まとめ

いかがでしたでしょうか。今回のタイの状況は、東南アジアの国々ではほぼ同様に散見されます。日本と外国では、文化や宗教などが異なるので、仕方ないすれ違いも多く生まれるものですが、温度差こそあれ、海外赴任を経験された皆さんは共通する部分でストレスを感じています。

それでは私たち日本人が海外赴任をした際、どうすればうまく日々の生活や業務をこなせるのか。これまでの経験をもとに筆者なりの結論が出ましたので、2024年1月号には、その総集編を述べたいと思います。次号11月号では、コロナの影響で約4年間訪問から遠ざかっていた韓国の最新情報について、特別報告版として皆さまにお知らせする予定です。どうぞお楽しみに。

※最近、海外出張、海外赴任前のビジネス英語研修や経営を含めた国際教養研修をご希望される企業様が多く増え、筆者として感謝しております。すぐに明日から、という対応が取れない場合もございますがご容赦ください。また、国内ビジネスにシフトをされている企業様から、国内人事処遇の再検討を依頼いただくケースも増えております。ご検討・ご希望の企業・団体様は、引き続き当社ホームページのお問い合わせ欄よりご希望をお聞かせください。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

<<18.海外で仕事をしてみてわかること(タイ仕事編)20.コロナ禍で韓国が変わったこと(韓国前編) >>

躍進企業応援マガジン最新号

2024年5月号好評販売中!