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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム18

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第18回からは、海外で生活・仕事をして初めてわかること、実感できることについてご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、このシリーズでは皆様から特にご要望が多かったタイ国関連のコラムから始まり、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と連載を続けてまいりました。直近の2回では、現地に着任してからの留意点と、海外出張を含め、海外赴任する前に日本でどのような準備をしていくことが大切であるかを、総集編的に述べてまいりました。今号と次号では、実際に海外で生活・仕事をしてみて初めてわかる大変さや、実感できることについて、タイを例に挙げて述べてまいりたいと思います。

① 会社や上司に対して自ら進んで意見を言わない

タイ国内の大手企業に勤務している社員でも、小規模で商売をしている方もおおむね当てはまるのですが、上司や社長に自分の考えや意見などを自ら進んでは言いません。「こうすればもっと良くなる、売り上げが伸びる」「お客様からこんなクレームを受けたから次からはこう改善したい」といった話もほぼ聞くことはないです。業界や業種、勤務先の状況によってさまざまな理由があるとは思いますが、一番根底にあるのは、タイの人々の心に宿る宗教(仏教)です。タイの仏教では年長者、上司に対して具申する教えはなく、指示通りに行動をすることを良しとします。この点については、将来的に大きく変化することはないでしょう。では、日本企業や日本人ビジネスパーソンがこの問題にどう対処すればよいのかというと、毎日の日報・週報のように、意見を出しやすいフォーマットを用意しつつ、意見や改善策をいくつかの選択肢から選ばせたり、担当者の意見を引き出したりして、地道に前進するしかありません。また、タイ人のビジネスパーソンは報連相を行わず自らの判断で物事を決めて勝手に進めてしまうことも多いので、その点も注意が必要です。

② 1つの職場に長く勤務することができない

これは他の東南アジア諸国でも同様のことが言えますが、自らのキャリアや給与とはまったく関係なく、極端な場合には1日ともたずにあっさり退職してしまう人々が多く見受けられます。「暑いから、つまらないから、疲れるから」等々、少しの我慢や忍耐もできない方が若年層には特に多いです。どうして自分が今、仕事をしているのか、この仕事を辞めたら明日からの実入りはどうするのかということもあまり考えません。一方、タイの職場にも大きな問題があります。日系企業や一部タイ大手企業を除いて、公平かつ公正な人事処遇制度を持ち合わせている会社は少なく、特にオーナー経営の中小の職場では週休2日が守られず、1日10時間以上の労働が当たり前。そのうえ給与水準は低く、欠勤すればそのぶんカットされる――そんな日本ではなかなか見ないような職場が、タイ経済の一部を占めてしまっているのです。

③ 常套句は「ありません」「できません」「知りません」

小売店などで買い物をしている時、自分が買いたい商品が見当たらずに販売スタッフに尋ねると、にべもなく「ありません」と返答されることが多々あります。系列店舗にあるかどうかや、バックヤードに在庫があるかどうかの確認もしません。また、必要な仕様や条件を満たした製品があるかどうかを尋ねても「知りません」と、自分が扱っていない製品については即答されてしまいます。製品についての勉強がまったくなされていないケースがほとんどです。

さらに、請求書を発行してもらう際にバイヤーの要望する振込先銀行の名前を挙げると「できません」と言って、自社、自店の取り引きや関係のある銀行のみを言われます。こちらから上の人間に確認して、どの銀行からでも大丈夫だと返答を得た後でさえ、担当者は表情1つ変えません。このような対応で、ビジネスチャンスを逃している現状がよく見えてきますね。

④ メモを取らない

男女を問わず、タイ人のビジネスパーソンは、仕事中に上司から指示を受けた時や、社内・お客様とのミーティングの時、あるいは自分で仕事の改善点を思いついた時でも、ほとんどメモを取りません。職場に自分のメモ帳や筆記具すら持ってこない人すらいるほどです。筆者は実際に現場で何度も「どうしてメモを取らないのか」と質問しましたが、その答えとしては「メモ帳を持っていないから」「上司が何を言っているかわからないから」「メモの取り方がわからないから」、「全部覚えられるので必要ないから」「メモを取っても二度と見ないから」「面倒くさいから」等々···。皆さんはどのように思われるでしょうか?

⑤ あまり微笑まない

旅行のガイドブックなどではよく、「微笑みの国・タイ」というコピーを見かけます。しかし、ことビジネスシーンにおいては、接客業や小売業に携わる方であっても、あまり微笑みがみられません。それだけではなく、「こんにちは」「ありがとうございました」「いつもご来店ありがとうございます」「またお越しくださるのをお待ちしております」といった、顧客対応における基本的なあいさつさえできない・しない方が極めて多い印象です。ひどい場合にはこちらのクレジットカードを粗末に扱ったり、使用可能だと記載しておきながら「このカードは使えません」と応対されることさえある始末。これは日本や欧米では考えられないような低品質のサービスですよね。これらは、「お客様にお金をお支払いいただいている」ではなく「こちらが商品を提供してあげている」という意識を持っていることや、ほとんどのスタッフが「短期的な給与稼ぎですぐに辞めるから最低限の業務だけこなせばいい」と思っていることが関係しているのでしょう。顧客の気分や気持ちまで察しようという努力はないのです。

⑥ 自己流が多くマニュアル通りのやり方が継続できない

タイにおける工場仕事や事務作業で共通しているのが、マニュアルや指示書がほとんどないということです。前述したメモを取らないこととも関連しますが、作業手順を丁寧に教えても、翌日には違うことをしていたり、工程が抜けていたりする事態がどの現場でも見られます。なぜ指示通りにやらないのかを問いただしても、「こちらの作業手順のほうがやりやすいから」「この書類は必要ないから」と、自己流・自己判断を正当化しようとするばかりです。この辺りが、タイ人のビジネスパーソンが1つの職場で長く勤務することができない大きな要因になっていると考えられます。

今回お話しした内容はタイに限らず、他の東南アジア諸国においても起こっている現象です。タイ人のビジネスパーソンは、どなたも素直で一生懸命、自分の仕事をやろうとはしているのでしょうが、実際の現状を目の当たりにした日本人や欧米人のビジネスパーソンは、その質の差にストレスを抱えることが多いと思います。文化、宗教、習慣のすべてが異なる相手とビジネスをするには、ある程度のことは受け入れる必要がありますが、決まり事や方針に沿って行動しなければならない場面ではしっかり主張を通さねばなりません。日本人スタッフとして、冷静に繰り返し教えていきましょう。

今回は仕事の面での例をご紹介しましたが、次回は生活面にフォーカスして、現地へ赴任して初めてわかることの例をお伝えしてまいります。どうかお楽しみに。

※海外赴任前のビジネス英語研修や国際教養研修等をご検討されていらっしゃる場合、あるいはご希望の企業・団体様がいらっしゃる場合には、ぜひ弊社ホームページのお問い合わせ欄よりご希望をお聞かせください。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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