注目企業インタビュー
製造・技術
440年の歴史が醸し出す味わいを
次世代までつなぐ老舗の造酢会社
尾道造酢 株式会社
取締役 田中丸 善要
PROFILE
製薬会社に勤務した後、親戚とのつながりから尾道造酢(株)に入社。大手造酢メーカーのもとで造酢を学び、新商品開発にも力を入れる。2022年にはオンラインストアもオープン。より多くの人に自社商品やお酢の効果を広められるよう、続々と新たな挑戦を続けている。
COMPANY DATA
- 住所
- 〒 722-0045
広島県尾道市久保1-5-2 - URL
- https://kakuhoshisu-onomiti.com/
矢部 尾道造酢(株)さんは、何と440年以上の歴史がある造酢会社さんなのだそうですね。
田中丸 矢部さんのおっしゃる通り、当社は天正10年(1582年)に創業されました。私は以前は製薬会社に勤めていたのですが、親戚とのご縁から跡取りという形で2017年に入社をしたんです。最初は知識や技術のない状態でしたが、440 年の伝統を守り抜くため、造酢業について1 から修業に励みました。
矢部 まさに新しい風という立ち位置から、歴史や造酢を学ばれたのですね。
田中丸 はい。長年守られてきた歴史や優れた技術力が、当社の一番の強みになっていると強く感じています。創業以来440年以上受け継がれてきた酢酸菌を徹底して管理し、お酢の味わいを保っているんです。
矢部 何世紀も紡がれてきた味を楽しめるなんて、不思議な気持ちです。やはりそこには、独自の製法があるのですか?
田中丸 酢酸菌は、1日でも放っておくと香りなどの品質が下がってしまいます。アナログではありますが、今でも当社独自の伝統製法を用いて、365日、欠かさず人の手でお世話しているんですよ。やはり手作業で丹念につくり込むお酢と、機械的に製造されたお酢とでは、全然味わいが違うんですよ。
矢部 最近は免疫力を高める食材として、お酢の注目度も高まっていますよね。
田中丸 はい。実はお酢に含まれる酢酸菌は、摂取すると免疫力向上やアレルギーに効果が期待できることがわかり、サプリメントとして販売しているメーカーもあります。より多くの人にこの効果を広めるため、近年では新商品の開発にも力を入れています。尾道造酢伝統のお酢の1つであるモルトビネガーの他に、広島産のピオーネを使ったぶどう酢、尾道特産の橙の皮を再利用した橙果皮酢など、5年間で5 商品の開発を手がけました。
矢部 それは、異業種からの転身となった田中丸さんだからこその挑戦ですね。
田中丸 ありがとうございます。以前は昔からのしがらみなどもあり、なかなか新しいことに挑戦できないのが課題でした。しかしよりお酢の認知度を広めるためにオンラインストアを開設するなど、近年では新たな挑戦を継続しています。
矢部 プレッシャーがありつつも、やりがいのあるお仕事のように感じました。
田中丸 ええ。地元の飲食店にも卸しているので、直接お客様の反応がうかがえるのも嬉しくて——その姿を見ると、私たちは質の高いものをつくり続けているのだと、大きな喜びを感じるんです。
矢部 今後の展望についても、ぜひおうかがいしたいです!
田中丸 会社の規模を大きくしたいというよりも、これまでの歴史を大切に守り続けていきたいですね。そして、次世代を担う人材に技術や思いをつなげ、夢を持たせられるお酢づくりを続けていきたいです。
GUEST COMMENT
矢部 美穂
今の日本において、440年以上続く企業というのもなかなかないと思います。それだけの歴史を守っていくという使命がありつつも、新しいことに積極的に挑戦されている姿勢が素晴らしいと感じました。お酢が、もっと日常の中に根付いたものになっていくと良いですよね。今後の展開も楽しみにしています!