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コラム

Special Voice 歯科技工士 北薗 里佐
コロナ禍や低迷する日本経済、戦争や環境問題など、混迷する現代社会において、各分野で挑戦を続け、わが道を歩んでいる方々の言葉を通して、一歩を踏み出したい読者の背中を後押しする企画。第3回は、SNSフォロワー数2.5万人、歯科技工士界のカリスマとして業界イメージの変革に挑む北薗里佐氏に、能動的に行動を起こして前進し続けるスタイルの神髄を聞いた。

 
――歯科技工士としてご活躍中の北薗さん。意外にも最初に目指されたのは料理人の道だったそうですね。
 
はい。高校時代に先生から大学進学を勧められたものの、私自身は早く手に職を付けたいという思いが強く、幼少期から興味があった料理の世界へ行こうと。それで大阪の調理学校へ通って調理師免許を取り、高級懐石料理店「吉兆」に就職しました。ただ、給与面でも労働時間の面でも自分が思い描いた環境で働くことはできず、2年で辞めることにしたんです。それから数年は道を模索する日々が続き、周囲からもいろいろな職業を紹介してもらっていたのですが、その中で気になったのが歯科技工士の仕事でした。

――料理人から歯科技工士へ。まったく異なる分野への転身だったかと思いますが、決め手は何だったのでしょうか?
 
自分にとっても完全に未知の職業で、周りの人間もよく知らない。まずそこに魅力を感じました。私は人と同じことをするのが嫌いなので、「誰も知らないことをやれるのは楽しそうだな」と。そうして詳しく調べてみると、ものづくりをしながら講演をしたり、海外でも仕事ができたりと、幅広く活躍できる職業であることがわかり、「やろう」と決心しました。それに、手でつくること、それが“口に入れる物”であること、目の前の患者様と向き合うことなど、料理人との共通点も多いと感じたんです。

――実際に働き始めてみて、続けていける手応えはすぐに感じましたか?
 
資格取得までは思い通りに進んだのですが、最初に就職した歯科技工所がとにかくハードなところで・・・。家にもろくに帰らず早朝から深夜まで働く日々に、「夢のある仕事だ」とは思えませんでしたが(笑)、独立した先輩の中には活躍されている方もいたので、自分もとにかく技術を磨いて次のステージへ進もうと考えていました。一歩踏み出せば変わる、というビジョンを持てたことが、辞めずに続けられた秘訣だったと思います。

――そうして経験を積まれ、現在は歯科医院併設の「D.D LABO」でチーフテクニシャンを務められています。施設の特長とお仕事の内容を教えてください。
 
「D.D LABO」は、当院の理事長が、各分野の専門家を集め、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士が三位一体となって患者様に対応するというコンセプトで立ち上げた施設です。多くの歯科医院は補綴物の製作を外部の技工所に依頼しているのですが、それだと色や素材の細かい話ができず、歯科技工士との情報交換も十分ではないため患者様のイメージと違う物になりやすいという問題があります。その点、当院は補綴物をつくると決まった段階で私がすぐその場へ行って、鏡を見ていただきながら「今の色がこの色なので、お顔の形やご年齢などを考慮するとこちらの色が顔に調和した自然な色かと思います」と見本と合わせながらしっかりヒアリングやご提案ができるので、仕上がりのクオリティも患者様の満足度も上げられるのです。スーツで例えるなら、既製品ではなくオーダースーツを1から仕立てられるイメージですね。私自身は、セラミックやジルコニアといった素材を得意分野としていて、院内はもちろん外の歯科医院からのご依頼も含めて月に200~300の補綴物を手がけています。

――これだけ多くの依頼が集まってくる秘訣はどこにあるのでしょうか?
 
SNSの発信に力を入れたことですね。歯科技工士の世界は内向的な人が多く、与えられた仕事だけをこなしがちです。営業も、歯科医院に飛び込みで行って、100件中1件取れるかどうかという厳しいやり方になってしまっていて――そんな中で私は、自分の仕事やプライベートのことをSNSでとにかく発信して露出を増やしつつ、「あの人は口だけじゃない」と思ってもらえるだけの技術を“裏付け”として磨き続けることで、着実に支持してくださる方を増やしました。口だけでも技術だけでもない。そこを両立したからこそ、営業せずとも多くのご依頼をいただけるようになったのだと思っています。

――そうした北薗さんのノウハウを同業者に伝えるべく、最近はプライベートセミナーにも注力されているとか。
 
思い立ったら即行動、が自分の信条なので、「やりたいな」という思いが湧いた瞬間にすぐ開催を決めました。コロナ禍で大規模なものは難しい中、ヒントにしたのはパーソナルジムのようにマンツーマンでできるスタイル。受講者さんが抱えている悩み・課題を事前にお聞きし、私が丸一日、一対一でレクチャーします。技術に関することは個別に教材を用意しつつ、その場で実践的に教えられますし、それ以上に皆さんが興味を持ってくださるのは私の経営思考です。歯科医師の方と対等な関係で仕事をするにはどうコミュニケーションを取るべきか、患者様と信頼関係を築くにはどう向き合うのかなど――大勢の前ではためらいがちなことも遠慮なく質問できるというのも、マンツーマンの良さかなと思います。

――最後に、これから実現したい北薗さんの“夢”をお聞かせください。
 
私のようなスタイルで働く歯科技工士を1人でも増やし、お金も仕事も人脈も豊かな職業だというイメージを持ってもらえるようにすることが目標です。私が皆さんに伝えたいのは、リスクを恐れず行動しよう、ということです。仮に失敗しても、一度どん底に落ちた人はバウンドのエネルギーで必ず跳ね上がれます。平々凡々な状態から上を目指すほうが難しいのです。“受け身では成長できない”という焦りを持って、変わりたい方はぜひ私のところへ来てください。
 

前山 貴弘
 
高校卒業後は大阪の調理学校へ進み、調理師免許を取得。高級懐石料理店「吉兆」に就職して修業を積むも、環境が合わず2年ほどで料理人の道に見切りをつける。その後、新たな道を模索する中で歯科技工士の仕事を知り、多分野で活躍できる可能性に魅力を感じたことから資格を取得。複数の歯科技工所で技術を磨き、現在は人形町ハルタ齒科併設の歯科技工所「D.D LABO」のチーフテクニシャンを務める。SNSを活用したマーケティングや情報発信によって歯科技工士の地位を向上させることにも尽力し、多忙の合間を縫って同業者へのプライベートセミナーなども積極的に開催している。

 
 
 

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