コラム

キャンプやサバイバルに関するアウトドアスクールを主催しているイナウトドア合同会社の森豊雪代表が、アウトドアの魅力をお伝えする連載コラム。日本の山林火災は、たき火や火の不始末などの人為的な要因が主な発端であり、毎年必ず起きている身近な災害だ。今回は、そうした災害の変遷や発生時の法的取り組みなどを絡めながら、アウトドアにおける火の扱い方について考えていく。
◎山林火災とキャンプとの関連性
2025年の冬からかなりの大規模林野火災が発生した。2025年の大船渡市などでの大規模林野火災を踏まえて、消防庁では新たに林野火災注意報並びに、林野火災警報が創設された。これらは2026年1月から全国の多くの市町村での運用が開始されている。これは各市町村が林野の危険性に応じて発令するものである。
日本の山林火災の現状
このコラムを書いている時にも各地で山林火災が起きている。大変な火災が広がり、人的な被害まで起きている。この場を借りて被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げる。そもそも山林火災はどれくらいの件数が起きているのだろうか。
日本における山林火災(林野火災)は、長期的に見ると大きく減少してきた災害の一つであるようだ。
戦後間もない時期から高度経済成長期にかけては、全国で年間数千件規模の山林火災が発生しており、1970年代には年間8000件近くに達した年もあった。当時は焼失面積も大きく、1年間で数千ヘクタールの森林が失われることが珍しくなかった。その後、消防体制の強化、火入れ管理の徹底、地域での防火意識の向上などを背景に、山林火災の発生件数は長期的な減少傾向を示してきた。1970年代後半には年間平均で約6000件、約5700ヘクタールの焼損が記録されていたが、2010年代には年間1500件前後、焼損面積は1000ヘクタール未満が平均的な水準となった。
近年の状況を見ると、この傾向はおおむね維持されている。直近5年程度では、山林火災の発生件数は年間およそ1200~1300件前後で推移しており、焼損面積は年によって差はあるものの、数百ヘクタールから1000ヘクタール程度に収まっている。
総じて見ると、日本の山林火災は、発生件数・焼損面積ともに過去と比べれば大幅に減少している。しかし一方で、火災の多くが人為的要因(たき火、野焼き、火の不始末など)によって発生している点は現在も変わらず、また気象条件次第では被害が急激に拡大するリスクも残されている。
このように、山林火災は決して「珍しい災害」ではなく、規模は小さくとも、毎年必ず起きている身近な災害であり、継続的な注意と対策が求められている。
新たな法的取り組みの概要
ここで当該注意報、並びに警報の概要を確認しておこう。
● 林野火災注意報:降水量や乾燥といった条件により林野火災が発生・延焼しやすい危険な状況。発令時には、その地域では屋外での火の使用をひかえるよう努める必要がある。
● 林野火災警報:林野火災注意報の条件に加え、強風注意報が発表され、発生した林野火災が大規模化しやすい危険な状況。発令時、その地域では屋外での火の使用が禁止される。火の使用制限に違反した場合は、消防法違反として30万円以下の罰金又は拘留に科される場合あり。
続いては、林野火災注意報・林野火災警報発令時において、屋外での火の使用制限がかかった際の例を見ていこう。
① 山林、原野等において火入れをしないこと。
② 煙火を消費しないこと。屋外において火遊び又はたき火をしないこと。
③ 屋外においては、引火性又は爆発性の物品その他の可燃物の附近で喫煙しないこと。
④ 山林、原野等の場所で、火災が発生するおそれが大であると認めて市(町・村)長が指定した区域内において喫煙しないこと。
キャンプなどの活動への影響
このようなことが自分たちのアウトドア活動にどのような影響を与えるのか、具体的に考えてみた。その一番大きなものはたき火だ。注意報レベルであれば(必ずしも良いわけではないが)規制の対象になるものの禁止ではない。一方、警報になると前述の②にあるように屋外でのたき火はしないこととされている。
では、警報にあるように同時に強風注意報が出ている場合とはどのような状況か。強風注意報の発令は風速12m/sが一つの基準とされている。風速10~15m/sはどの程度かというと、「樹木全体が揺れ始める」程度なので、それなりの強さである。キャンプで使うタープなどは8m/sを超えたら張るのをあきらめようと、当社で開催しているスクールなどでも話をしているので、もはやキャンプを普通にしているような環境ではないだろう。そういう意味では、今回の新たな規制が直接的な影響を及ぼす可能性は低そうだとは思う。
このような強風下でたき火をすれば風にあおられ、火の粉が飛んでしまい、火災の元になる可能性が大だ。火というと、炎を連想する人も多いだろう。だが、実際には、たばこの不始末などでも大きな火災につながっている。子どもたちとキャンプスクールをしていると、たき火が熾火(炎が出ずに燃焼している状態)になったのを見て、「火が消えた」と言う子が多い。確かに無炎燃焼をしていて、オレンジの炎が見えないのは、子どもたちにとっては「消えた」状態なのであろう。それは大人でも似たような認識の場合もあって、小さな熾火からはたき火に戻せないという認識の方も珍しくない。だが、ほんの小さな火や炭火でも十分発火する恐れがあるということはあらためて認識してほしい。最近ではあまり耳にすることがなくなった「マッチ一本火事の元」。注意報や警報にかかわらず、それぞれのおかれた環境を認識したうえで、火の扱いには十分気を付けてアウトドア活動を楽しもう。

| 森 豊雪 学業修了後はエネルギー関連の製造会社に入社し、30年以上にわたって勤務する。55歳を迎えて新しい道を模索。もともと趣味で活動していたアウトドア分野で起業することを決意し、イナウトドア(同)を立ち上げた。現在は、オリジナルアウトドアグッズの開発や、サバイバル教室などの展開、自然保護のボランティア活動に注力している。 ※保有資格 ・NCAJ 認定 キャンプインストラクター ・JBS 認定 ブッシュクラフトインストラクター ・日赤救急法救急員他 ■企業情報 イナウトドア 合同会社 〒238-0114 神奈川県三浦市初声町和田3079-3 ■URL https://www.inoutdoor.work/ ■X(旧Twitter) @moritoyo1 |
▶イナウトドア(同)では親子向けスクールや焚き火体験なども行っております。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。