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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.34

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第34回は、海外の国々における代表的なビジネス習慣や商慣習について、ロシア編をご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、タイ国、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と連載を続けてまいりました。2024年5月号からは海外の国々における代表的なビジネス習慣・商習慣について米国、オーストラリア、シンガポール、中国、韓国、インド、タイ、UAE、トルコ、ドイツ編を執筆しました。今号では読者の皆様からご要望の多かったロシアについて焦点を当ててまとめていきます(ご要望の国がありましたら、今後可能な限りお応えいたします)。

はじめに

ロシア連邦(以後、本コラムではロシアとします)。2025年7月7日更新の最新のJETROデータによると、国土は1712万5000平方キロメートル(日本の約45倍以上)で、人口が約1億4612万人。言語はロシア語と、その他の各民族語となっています。宗教はロシア正教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教などで、首都はモスクワです(約1328万人で欧州1位)。*1 2024年、国民1人当たりの名目GDPは14,795ドルでした(※日本は同36,030ドル)。経済成長率は+4.3%で、消費者物価上昇率は9.5%(※日本は同2.7%)。*2 ロシア在留邦人は930人となっています。*3 ロシアの主要産業は鉱業(石油、天然ガス、石炭、金、ダイヤモンドなど)、鉄鋼業、機械工業、化学工業です。ロシアの産業別GDP構成比を見てみると、第一次産業(農林水産)が3.5%、第二次産業(鉱業、製造、建設、電力)が35.9%、第三次産業A(卸売り、小売、運輸)が16.7%、第三次産業B(飲食、宿泊)が7.5%、第三次産業C(情報通信、金融、不動産、その他サービス)が36.3%となっています。日本からの主要輸出品目は自動車(64.5%)、医薬品(3.2%)、自動車の部品(3.1%)、食料(2.9%)。また日本への主要輸入品目は液化天然ガス(63.8%)、魚介類(15.1%)、非鉄金属(10.2%)、木材(3.6%)、石炭(3.5%)になります。*4

①時間管理がかなりアバウト

もちろん全員がというわけではありませんが、ロシア人(東スラブ人系)には時間の管理にアバウトなビジネスパーソンが多くいます。「渋滞していた」「家族からの重要な長電話があった」「冬場雪道で思うような運転ができなかった」など、さまざまな理由で約束の時間に遅れることも少なくありません。ただ、会議に遅れてくると「遅れて申し訳ない」という言葉が出るビジネスパーソンは結構いらっしゃいます。会議が始まる時間はアバウトかもしれませんが、終わる時間はきちんと守るというのが特長です。これは残業をせず、時間通りに帰宅して家族との夕食や団らんの時間を削りたくないためです。

②初対面時の無表情と不愛想

ロシアのビジネスパーソンは外国企業との初対面の時は概ね無表情で口数が少なく、一見すると不愛想にも見えます。これは相手のことを知らないため、警戒して自分の殻を破らなかったり、人見知りをしていたりするのが大きな理由です。また多くのロシア人は英語が苦手であるため、コミュニケーションがままならないこともその理由に拍車をかけています。ところが面会や商談の回数が増え、何か共通の趣味や話題ができると、そこから状況は大きく変わってきます。ロシア人ビジネスパーソンは本来陽気で話好きであり、友人や家族を大切にし、日本人のように情が深い人が多いです。ロシアでのビジネスをうまく進めていくためには、初めから肩肘張ったお堅いビジネスの話で入るよりも、少しずつプライベートの近況報告などを話すことから商談を行うと良いです。わかり合えた時は本当に仲が良くなり、ビジネスも調子よく進んでいきます。

③メモをとる習慣がない

筆者はモスクワやサンクトペテルブルグで、主に水産品や飲料、食品関連の卸会社などの購買担当者の方々と打ち合わせを行ってきましたが、輸出入の具体的な話や契約に関する大切な話であったにもかかわらず、ほぼすべてのロシア人はPCへの入力はおろか、メモ1つ取らず商談を進めていました。業種や業界は違っても、ロシアではごく自然にこのような商談の進め方をしています。私はこれまで、項目ごとにわかりやすく英語で箇条書きにしたミーティング議事録を作成し、商談の都度双方出席責任者のサインをもらい、コピーをロシア側に提出してきましたが、いつもあっさりとサインをしていただきました。良い方向で解釈するならば、日本側の私達を信用してくださったからかもしれません。

④会議は短時間で断定的に

以前、モスクワのチェーンレストランのオーナーと日本からの高級商材を輸入する件で商談を行った際のことです。初面談の時間を当初1時間で設定し、双方合意をして自己紹介から始めましたが、15分くらいするとオーナーから「時間がかかりすぎるので輸入候補商材は日本側で選んでほしい」と提案がありました。こちら側からの質問にはイエス・ノーをはっきりと答えてくださいましたが、ミーティングは10分程度にしてほしいとのことでした。通常、レストランのメニューそれぞれで、具体的なオファーをいただかなければ商談を進めていくことは厳しいと思いますが、その部分を私達に任せる(任せていただく)のはいかがなものかなと感じました。同行された日本からの食材輸出商社のご担当者も同様に感じていらっしゃったそうです。後にこのチェーンレストランと日本の食材輸出商社は、無事に契約締結されました。

④同業他社と差別化を図る

ロシアでは首都モスクワの高級食品スーパーでも、日本食材や食品、お菓子、飲料、アルコール類の種類は豊富であるとは言えません。そのため、同業他社との差別化を図る意味で、他の日本製の新商品や他社が仕入れていない商品には強い興味を持ちます。また、輸入実績がついても契約時は現金フルペイメント支払い、振り込みあるいは「契約時に50%を払い、残金は日本からの輸出前に」といった具合で、支払い実績が乏しいのにすぐに次回から掛け売りを要求してくるケースはあまりみられません。販売するほうもバイヤーも、支払いの決済についてはきっちりと済ませる光景を何度も見てきました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ロシアとのビジネスというと、他国とのビジネスと比べると距離感が少しあるかもしれません。日本からも各業種で大手企業が進出をしていますが、それでも業種によってはまだ参入する隙間があると思います。ロシアは日本から遠く、気候的にも寒冷地域が国土の大半を占めていることに加え、人口100万人以上の15都市もそれぞれ距離があります。そのため、どうしてもロシア全土をカバーするというよりは、エリアを絞ったうえでの事業の展開にはなると思います。良い取り引き相手やパートナーに巡り合うことで、新たなビジネスチャンスを得られる可能性を秘めています。

さて、今まで長期にわたり海外の主要国におけるビジネスのやり方、商習慣などに関するコラムを執筆してまいりました。前号の付記でも記述したとおり、昨年から多くのご要望をいただきましたので、次号より数回程度にはなると思いますが、起業後間もない国内企業様を主に対象とした、経営基盤の構築(再構築)や社内の人事諸制度の構築など、見直しをしていくためのお役に立つコラムを掲載させていただきます。どうかご期待ください。

引用
*1:JETRO ロシア概況・基本統計
*2:2025年10月 外務省経済局主要経済指標
*3:2024年外務省「海外在留邦人数調査統計」
*4:財務省「貿易統計」よりJETRO作成

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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