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コラム

オフを充実させ、より良いビジネスライフを! 大人が楽しむアウトドア考

キャンプやサバイバルに関するアウトドアスクールを主催しているイナウトドア合同会社の森豊雪代表が、アウトドアの魅力をお伝えする連載コラム。人間はこれまで自分たちの暮らしの利便性を追求し、生態系を崩してきた。動植物を守る法律も定められているが、その根底には人間の暮らしを優先した前提がある。今回は生態系を守るため、生き物と人間が共生するためにできることを考えていく。

◎生き物と人間が共生していくためにできること

子どもの頃、私の遊び場は近所の田んぼ、森や林、池だった。休みの日には田んぼに行き、ザリガニを探し、池ではミズカマキリを捕まえ、林の中ではセミを探し回った。捕まえたセミは玄関スペースに放すなどしていたので、家の中にセミの声が響き渡っていた(笑)。泥だらけになって帰ることもしょっちゅうだった。あの頃は「生き物を捕まえること」に何のためらいもなかった。もちろん、法律なんて知る由もない。

実はそんな私には子どもの頃からの憧れがある。それは「タガメ」の採集だ。水の中の王者ともいえる存在で、アニメにも登場していた。ミズカマキリは幾度となく見つけられたのだが、なぜかタガメだけは見つけられなかった。いつか本物を捕まえてみたい――そんな思いをずっと胸に抱いていた。

ある日、SNSにその思いを書いたところ、友人から「タガメは絶滅危惧種だから捕まえちゃダメだよ」と言われた。驚いて調べてみると、確かに環境省が定める「特定第二種国内希少野生動植物種」に指定されていることを知った。法律上、販売目的の捕獲は禁じられているが、個人の観察や一時的な採集であれば、場合によっては認められることもあるらしい。それを聞いて少し安心した。

とは言うものの、「ああ、生き物にも法律があるのか」と気付かされた。子どもの頃はそんなことを考えたこともなかったし、大人になっても、正直あまり気にしてこなかった。でも、今になり、日本では「動植物を守るためのルール」が実に細かく定められていることを知ることとなった。

思い返せば、小学生の頃の私は特にセミ取りに夢中だった。鳴き声の方向を正確に聞き分け、木のどのあたりにいるかすぐにわかったものだ。今では、木の幹にセミが止まっていても気付かないことのほうが多い。あの頃の集中力と好奇心は、今思えば生き物への純粋な愛着そのものだったのだと思う。

話を先ほどの「タガメ」に戻そう。さまざまな生き物の販売や乱獲が増えていけば、生態系が崩れるのは確かだ。人間の私欲のために数を減らしてきた歴史を思えば、そうした規制も理解できる。一方で、「人間以外の生き物の運命を、人間が決めてしまう」という構図には、どうしても違和感が残る。

自然界ははるか昔から「弱肉強食」という厳しい掟の上に成り立っている。生きるために食べ、奪い、淘汰されてきた。それを「人間の都合」で制御しようとすることが、果たして自然に優しいことなのだろうか。

クジラの問題も同じだ。かつて捕鯨は禁止されたが、クジラはあの大きな口で大量の小魚を食べる。結果として魚が減り、漁業者が困る。そこで「捕ってもいい範囲」が見直される。生態系を守るための法律が、人間社会の都合によってころころ変わっていく――そんな現実に、私はどうしても矛盾を感じてしまう。

かといって人間という存在がクジラを誰も取らなかった場合はどうなるのだろう。保護している以上にクジラは減らないのだろうか。

動植物を守るための法律は、確かに必要だとは思う。だがその根底にはいつも「人間の生活を守るため」という前提がある。自然を守ると言いながら、森を切り開き、川をせき止め、海岸をコンクリートで覆う。都市計画法などを見ても、人間の暮らしを便利にするために自然が犠牲になっている構造は変わらない。去年の秋は熊による事故が例年以上に報告された。熊を駆除すれば批判もあるが、熊の存在はその地域に住む人々にとっては深刻な問題だ。「もともとそこは熊の生息域ではなかったのか?」などさまざまな思いが頭をめぐる。

地域によっては、天然記念物や保護区域に指定され、石ころひとつ持ち帰ることすら禁止されている場所がある。自然を守るという名目は立派なのだが、そこに人間の「所有欲」や「管理欲」が混ざってはいないだろうか。自然は本来、誰のものでもない。

こうして生き物や自然をめぐる法律を調べるうちに、私は「人間の勝手さ」について考えさせられるようになった。便利さや経済のために環境を破壊しておきながら、「守ろう」と言い出す。しかも、そのルールを決めるのは常に人間だ。生き物たちには、声を上げる権利すらない。

とはいえ、法律を否定するつもりはない。私たちがこの時代を生きる以上、法に従うのは当然だ。しかし同時に、どんなルールも万能ではない。法律の文面よりも、そこに込められた「意図」や「思いやり」を理解しなければならないのではないかと思う。

生き物に関する法律を知ることは、単なる知識ではなく、自然とどう関わるかを見つめ直すきっかけになる。私にできることは、複雑な条文をすべて理解することではない。せめて、無駄な殺生をしないこと。生き物を「もの」ではなく「いのち」として尊重すること。そして、自然の一部としての自分を忘れないことだ。

子どもの頃のように、ただ夢中に森を駆け回ることはもうできない。それでもあの頃感じた「生き物への憧れ」は、今も私の中に息づいている。

生き物を守るための法律があるように、人間の心にも「自然を思うルール」が必要だと思う。法律を超えて、一人ひとりが自然に対して謙虚であること――それが、本当の「共生」への第一歩なのかもしれない。

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https://www.inoutdoor.work/school
■プロフィール
森 豊雪

学業修了後はエネルギー関連の製造会社に入社し、30年以上にわたって勤務する。55歳を迎えて新しい道を模索。もともと趣味で活動していたアウトドア分野で起業することを決意し、イナウトドア(同)を立ち上げた。現在は、オリジナルアウトドアグッズの開発や、サバイバル教室などの展開、自然保護のボランティア活動に注力している。
 
※保有資格
・NCAJ 認定 キャンプインストラクター
・JBS 認定 ブッシュクラフトインストラクター
・日赤救急法救急員他
■企業情報
イナウトドア 合同会社
〒238-0114
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