コラム


あれ?叔父さん元気ないね

実はかわいがっていた部下が、僕のことをパワハラで告発したらしいんだ。

ええ!?心当たりはあるの?

あまりに不機嫌な態度の時、注意しても直らなかったから、声を荒らげて叱っちゃってさ。

ああ、怒鳴っちゃったんだ・・・

でも、よく飲みに誘って悩みを聞いていた子なんだ。そしたら「飲み会も本当は嫌だったんです」って。ショックだよ・・・

どんまいどんまい。叔父さんの気持ちはきっと伝わるよ。叔父さんだって上の世代に「罰として丸刈りにしてこい」って怒られたらさすがにビックリするでしょ?やっぱり「当たり前」の価値観は世代ごとに変わっていくよね。
「パワハラ」の線引きってどこですか?
9月号のおさらいとなりますが、法律上には「ハラスメント」自体を犯罪として罰するものがありません。では、もし「パワハラ」で訴えられたらどのような結末が待っているのでしょうか。
とある保険会社で、やる気のない部下に上司が次のようなメールを送りました。
「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです」
この事件では、複数の社員が見られるメールだったこと、注意だけにとどまらず、「不要な人間」とも受け取れる表現をしたことなどから、名誉棄損による慰謝料請求が認められました。*1
このようにパワハラについてはその程度を個別に判断していくので、一概に線引きをしづらい側面があります。特に考慮されやすいポイントを次にまとめてみました。*2
・行為の頻度(同じ人を執拗に叱っている)
・相手の問題行動(目に余る場合は多少厳しい指導も仕方ない)
・身体的な攻撃(違法性が認められやすい)
・人格を否定する内容(「存在価値がない」など。違法性が認められやすい。)
・相手の年齢や経験値(新卒のミスに過度な叱責をするのは合理性に欠ける)
「怒る」以外の叱り方ってありますか?
今の若者には「諭す」のではなく「自分で気付かせる」ことが効果的だと思います。
例えば部下が不機嫌なケース。お恥ずかしながら、私も2年前の新卒時代に同じことをしてしまい、弁護士のボスに叱られたことがあります。でも、不思議と「怒られた」感覚はなく、とにかく自省し、二度と同じことをしないようになりました。
ボスがやったことは1つだけ。職員全員が見られるチャットツールで次のようなメッセージを送りました。
「私の好きな本からの抜粋です。上機嫌というのは「技術」である。・・・機嫌というのは結局は「技術」と「知性」の問題なので、可能な限り「技術」と「知性」を身につけたいですね。参考:『上機嫌の作法』齋藤孝」
いろんな職員が「確かに大切ですね。気を付けます」と返信していくなかで、頭が真っ白になり、「これは間違いなく、私のことだ」と急に恥ずかしくなりました。そして帰宅してすぐその本を読み、翌日ボスと職場の皆さんに謝罪しました。
ボスは私に、何が悪かったのか、次はどうすればよいのかを自分の頭で考え、実行するチャンスをくれました。実は、このボスの行動は心理学的にも理にかなってるんです。「イエス誘導」という言葉を聞いたことはありますか?「イエス」で答える質問を続けることで、最終的な要求にも「イエス」と言わせるテクニックなのですが、自分の言った「イエス」と矛盾する行動をとらないよう誘導する仕組みです。少し状況は違いますが、私も「上機嫌でいることが僕は好きなんだ。大切だよね。」と問いかけられ「イエス」と答えざるを得ない状況になったからこそ、無意識に「私も上機嫌でいなければ」と促されたのです。他にもいろんな方法があると思いますが、1つの参考として心に留めていただけたら嬉しいです。
若者も、上の世代の価値観を知りたい
今の若者は「タイパ重視(タイムパフォーマンスを優先する)」と言われますが、それがもったいないこともあると思います。とある証券会社の部長に、「若いやつらは無駄なことをしたがらないが、何が無駄で何が無駄じゃないかは、やってみないとわからないじゃないか」と言われた時、私もその通りだと思いました。でも、それは私のボスからではなく、関係ない方に言われたからこそ、素直に受け入れられたことなのかもしれません。私たち若者は、まだまだ違う価値観を受け入れる度量も視野も足りていません。けれど、ふと心が開いた瞬間に入ってくる価値観にあっと気付かされることもあります。動画配信サイトで昔のドラマをさりげなく勧めるのも良いと思います。どうか、若者が皆さんの価値観を知るチャンスもいただけたら嬉しいです。
参照:*1「東京高判平17.4.20労判914号82頁」
*2 「『パワーハラスメントに関連する 主な裁判例の分析』独立行政法人労働政策研究・研修機構、2020年」

今月の課題:
1日100回「ありがとう」を言おう
私がミスコンのレッスンを受けていた時、一番「自分が変わった」と実感できた習慣が「1日100回ありがとうを言う」チャレンジです。まず、人に何かしてもらった時に「すみません」と言う癖が直りました。それから、自分に「ありがとう」を言えるようになりました。100回ものタスクがあると、誰かに感謝を伝えるチャンスもなくなって、最後は自分に「今日も生きててくれてありがとう」と声をかけるようになります。でもその一言が、すごく大切だと思いました。このチャレンジをしてみると今までどれだけの「ありがとう」をのみ込んできたのだろうと驚かされます。皆さんも“騙された”と思って、挑戦してみてください。言い忘れた「ありがとう」を一緒に探してみましょう。
![]() 1999年8月20日生まれ。立教大学法学部卒業。「Miss Japan2020準グランプリ」 (広島県代表として参加)。「Miss Grand Japan 2021」東スポ賞。2022年映画「夜明けまでバス停で」(高橋伴明監督)出演、メインキャストを務める映画が2024年末に公開予定(田中壱征監督)。3歳~18歳までバレエを習い、大学時代は社交ダンス界で世界的に名高い山本英美氏に師事。ギリシャ留学ではスタニスラフスキーの演技メソッドを学んだ。法律事務所で弁護士アシスタントとして勤務後、2023年に行政書士事務所を独立開業。法律知識を少しでも増やし、パワハラ等身近な問題に役立てたいと考えている。 ※保有資格 TOEIC:835 / TOEFL:84 / IELTS:6.5 2022年度行政書士試験合格 YouTube 「小倉早貴のあつまれ!ほうりつの森」 ![]() ![]() |