コラム
ハラスメントは犯罪なの?
「ハラスメント」は、英語の「harassmennt(嫌がらせ)」に由来し、その起源は古フランス語の「harer(獲物を追いかける)」にまで遡ると言われています。獲物を追いかけ回すことから転じて、相手を追い詰めたり、苦しめたりする行為を指すようになりました(※諸説あり)。日本では1989年に「セクシャルハラスメント」が新語大賞となって以降、ハラスメントの撲滅運動が広がっていき、2020年に通称「パワハラ防止法」という法律が施行されました。それまでは、ハラスメントの中でもケガをさせる「傷害罪」、自殺に追い込む「自殺教唆罪」といった、何らかの罪にあたるような重大な事案の場合に、民事裁判による損害賠償請求などで事後的な補填をしていました。しかしそれでは予防効果に乏しいとの批判から、企業に対して防止対策の義務付けや、被害者を不利益に取り扱うことを禁止するルールができました。実は法律上には「ハラスメント」自体を犯罪として罰するものが存在しないのです。ハラスメントはもっと広い概念で、犯罪にあたるものもあれば、そうでないものも含まれます。
ハラスメントの判断基準
ハラスメントの線引きは2つあります。1つは予防のために厚生労働省が提示している基準。もう1つは、実際にこれまで争われた民事裁判で蓄積された基準です。厚労省の基準はとてもわかりやすくまとまっていますので、会社のリスクヘッジという点では、まずそちらをチェックすることをおすすめします。*1 社員の持ち物を撮影するなど、意外な行為もハラスメントになる場合があると書かれています。
ハラスメントによる経営リスク
「ハラスメント防止法」では、企業がその防止義務を怠ったからといって刑事罰や過料が課されることはありません。企業名公表の措置はありますが、あくまで事前の勧告に従わなかった場合などに限られます。一番恐れるべきは、事後に発生する会社への負担です。特にSNSやメディアへのリークによる社会的評価の低下は看過できません。また、裁判になった場合は会社の使用者責任を問われる危険性があり(従業員が他人に損害を与えた場合、会社がその責任を負う制度)、コストもかさんでいきます。他にも、ハラスメント被害を理由とする退職は「会社都合退職」とされ、会社が助成金を受け取れなくなってしまう可能性があります。雇用関係の助成金では、「会社都合退職者がいないこと」が受給要件になることが多々あるからです。このように、ハラスメント防止対策を進めることは会社にとっても非常にメリットがあるのです。
経営者にできることは?
厚労省がおすすめしている施策としては、ハラスメントごとに社内での懲戒規定を定めたり、専門の相談窓口を設置したりする方法などが挙げられます。厚労省のHPにモデル懲戒規定があるので、それを活用されてみてください。*2
また、最近はチャットツールなどでのやり取りも増え、ハラスメントを発見しづらくなっています。こうした事案に備えて、AIを活用したハラスメント・不正会計などの総合検知ツールの導入もご検討されてみてはいかがでしょうか?例えば実際に起きた出来事なのですが、私の友人がとある社員から個別チャットで執拗に人格否定などの圧力を受け、自主退職にまで追い込まれました。こういった時も検知ツールによって人事部が素早く察知することで、配置変えなどのサポートが迅速に行えます。
特に中小企業だと、対策にまで手が回らなかったり、代々受け継がれている研修内容を変えづらかったり、消極的になりがちだと思います。けれど、事後対応の方がよっぽどコストがかかるという点は、ぜひ覚えておいていただけると嬉しいです。
参照:*1「厚生労働省 公式ホームページ PDF資料(職場におけるハラスメント関係指針)」
*2「厚生労働省 公式ホームページ PDF資料(職場のハラスメント防止対策対応事例集)」
今月の課題:
自分を宝石のように扱ってみよう
大切な人から、数千万円のダイヤの時計をもらったらどうしますか?雨に濡れたらきれいにふいて、定期的にメンテナンスをして、失くしたら一生懸命探すことでしょう。たった数時間でもかまいません。同じことを、たまにはご自身にもやってみてください。人間の欲求は5段階と言われていますが、衣食住、そして職がある程度満たされると、次は「承認欲求」の段階になります。そしてここが日本人にとってはなかなかのハードルなのです。「そんなわたくしめが・・・」という思考は美徳ではありますが、バランスも大切。私はお風呂を「女王様タイム」にして、マッサージやアロマを楽しみます。ほかにも顔パックをしてみる、筋トレをしてみる、休肝日をつくるなど、皆さんのお好きなことから。自分自身をまるで王様・女王様のように大切に扱ってあげてください。心に少しだけ、余裕が出てきます。
小倉 早貴(おぐら さき) 1999年8月20日生まれ。立教大学法学部卒業。「Miss Japan2020準グランプリ」 (広島県代表として参加)。「Miss Grand Japan 2021」東スポ賞。2022年映画「夜明けまでバス停で」(高橋伴明監督)出演、メインキャストを務める映画が2024年末に公開予定(田中壱征監督)。3歳~18歳までバレエを習い、大学時代は社交ダンス界で世界的に名高い山本英美氏に師事。ギリシャ留学ではスタニスラフスキーの演技メソッドを学んだ。法律事務所で弁護士アシスタントとして勤務後、2023年に行政書士事務所を独立開業。法律知識を少しでも増やし、パワハラ等身近な問題に役立てたいと考えている。 ※保有資格 TOEIC:835 / TOEFL:84 / IELTS:6.5 2022年度行政書士試験合格 YouTube 「小倉早貴のあつまれ!ほうりつの森」 |
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