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コラム

編集部のおすすめスポット探訪記 Report:6 特定非営利活動法人 町田リス園
訪れることでリフレッシュできる、あるいは仕事に生かせるヒントやアイデアが得られるスポットを紹介する連載企画。第6回となる今号では、約200匹のタイワンリスが放し飼いにされており、餌やりなどを通して間近に観察できる動物園「特定非営利活動法人 町田リス園」をご紹介したい。町田リス園では、リスの他にも、モルモットやウサギ、マーラ、デグーなどの多彩な動物たちが生活していて、こちらも一部では餌やりや触れ合い体験ができるということで、大人から子ども、外国人観光客に至るまで大変な人気を博している。また、現在約20名の障がい者(利用者※1)が勤務する就労支援B型施設としての役割も大きいものとなっている。今回は、町田リス園を存分に楽しむためのポイントや、動物たちと触れ合う際の大切な価値観、施設運営にかける強い思いなどについて、園長の樋口健治氏と飼育員の柳瀬美帆氏にお話をうかがった。

 
――まずは、(特非)町田リス園さんが設立されるまでの経緯について教えてください。
 
樋口 当園は、「障がいのある子どもたちが働ける場所を」という保護者の方々の切実な願いを受け、町田市と連携してこれまでにない新たな動物園をつくるため1988年12月にオープンしました。現在は約20名の利用者さんが働いていて、21歳から67歳まで幅広い年齢の方がいらっしゃいます。中には、35年以上在籍している方もいらっしゃるんです。リスの餌袋の作成といったバックヤード作業に加え、売店の販売員やドアの開閉係などのお客様とじかに接する仕事など、各人が伸び伸びと自身の才能を発揮できる場を設けています。「障がいのある人もない人も、社会の一員として働く喜びを感じられる場にしたい」「働くみんなも、ここに住む動物たちも、あらゆる命が大切にされる社会をつくりたい」という理念をオープン当初から現在まで貫き、地域との連携を図りながらここまで運営を続けているんですよ。。
 
――働く皆さんの意志や能力が尊重される環境をつくりたい、という思いが町田リス園さんの始まりだったのですね。「癒やしの動物園」とも呼ばれている貴園ですが、他の動物園とは違う魅力は、一体どんなところにありますか?
 
樋口 当園の魅力は、何といっても動物たちを近い距離で観察できることです。特にメインである「リスの放し飼い広場」では約200匹のタイワンリスが生活しており、お客様はその中でリスに自由に餌をあげたりすることができます。タイワンリスは食料の豊富な環境で育ってきた動物なので縄張り意識が低く、お客様も安心してコミュニケーションを取れるんですよ。また、当園が大切にしているのは、「あくまでもタイワンリスの住んでいる場に人間がお邪魔している」という感覚。だからこそ、われわれは何も生態系に手を加えず、リスが生まれては死んでいく、その自然の繰り返しを見守っています。
 
――生態系を崩さずに尊重することで、お客さんもその自然な環境で生きるリスたちの命と向き合えるということですね。
 
柳瀬 ええ。リスたちも野生動物なので、ただかわいいというわけではありません。急に飛びつかれたりもしますし、間近で見ると鋭い歯や爪も観察できると思います。そこで感じ取っていただきたいのは、野生動物と触れ合ううえでの正しい距離感です。普段生活していると犬や猫に顕著なように、どうしても動物をキャラクター化したり、人間の相棒のような位置付けにしたりするコンテンツも珍しくありません。もちろんそれも素敵なことなのですが、当園では、かわいい野生動物たちとの1歩距離を保った対等な関わり方を発信していけたらと思っているんです。
 
――野生動物との正しい関わり方についても発信されているのですね。事前にこれを見ておけば町田リス園さんをもっと楽しめるといったものがあれば、ぜひ教えてください。
 
柳瀬 例えばHP上にある「リスの放し飼い広場でのお約束」という動画では、RPGゲーム風にアレンジした内容の中で、お子様でも楽しめるような形で餌のあげ方や服装などをまとめています。こちらを見ていただければ、放し飼い広場に入る際の注意事項や楽しみ方がわかるようになっているので、ぜひご来園の前に視聴していただけると嬉しいです。また、「町田リス園 PR動画」という動画は、当園が就労支援B型施設の動物園であることを知っていただくために利用者の方々と一緒に制作したもので、手づくり感やほのぼの感を感じられる紹介映像になっていますので、こちらもぜひご確認いただけると、園内の雰囲気をよりわかっていただけると思います。
 
――町田リス園さんの就労支援B型施設としての活動はとても重要だと思います。利用者の方々と共に働くうえで大切にされている点は、どのような部分でしょうか?
 
樋口 人間であれば誰にでも言えることですが、利用者さんたちには皆、一人ひとりに能力や個性があり、できることとできないことがあります。だからこそ、当園では一般的な会社と同じように、利用者さんと話し合いをして1年の目標を設定し、お互いに納得したうえで切磋琢磨し合いながら共に働いているんです。そして利用者さんやその他の従業員とただ仲良くなるのではなく、良いところも悪いところもきちんと伝えながら、各人の目標に向かってサポートし合うという姿勢を大事にしているんですよ。

柳瀬 利用者の方々と一緒に働いていると、自分は普段の生活でも当たり前のことができていなかったと気付かされることがたくさんあります。利用者の方々は基本的にルーティンを大切にしていることが多いので、どんなに忙しくても「おはようございます」「ありがとうございます」「よろしくおねがいします」などのあいさつやお礼は絶対に言ってくれるんです。だからこそ、私も当たり前のコミュニケーションを軽んじず、まずは自分自身があいさつをするし、当然のことでもしてもらったらお礼を言うということを徹底していますね。
 
――お話をうかがう中で、町田リス園さんの理念を強く感じ取ることができました。最後にお二人から、これから来園されるお客さんへ向けたメッセージもぜひ頂戴したいです。
 
樋口 先ほどお伝えした通り、当園では、「動物の生態系に人間がお邪魔する」という環境づくりを大切にしています。私はこれからもたくさんのお子様に来園していただき、「弱いものをいたわり、生き物の命を大切にする心」を学んでもらいたいと思っています。また大人の方であれば、動物と触れ合う中で、子ども時代に立ち返るような感覚を再体験していただきたいですね。そして、純粋に喜んだり驚いたりできる子ども心を、存分に楽しんでいただけたら幸せです。

柳瀬 最近では、子どもの頃に来園されていたお客様が、次はカップルで、その次はご自身のお子様を連れて、というように何度も来園していただけることも多くなりました。このように、子どもの頃に見たリス園と、学生の頃に見たリス園、親になって見たリス園とでは、それぞれ見えてくる景色がまったく新しいものに変わっていると思うんです。ですから、ぜひお客様には人生の節目ごとにご来園いただき、そのタイミングに合わせた素敵な発見や楽しみ方を満喫していただけたら嬉しいです。
 
 

取材・文:木村 祐亮
写真:坂本 隼

 
(注釈)
※1「利用者」=就労支援B型施設「町田リス園」で働く障がいのある方のこと

Focus!
リス以外にも、モルモットやウサギ、マーラ、リクガメなど多種多様な動物たちが暮らしている。これらの動物たちとも、近い距離感で気軽にコミュニケーションを育むことができる。また、毎日開催の「モルモットの大行進」や、定期的に開催される「モルモルレース」、毎週水曜日・金曜日に開催の「ウサギさんのお庭」など、さまざまなイベントに参加することで、より深い交流が可能だ。
 

園長
樋口 健治(写真左)
 
BridalProduce会社を設立23年後に退職し、2014年に(特非) 町田リス園の園長に。働く中で毎日、障がい者と働くことへの感謝と楽しさ、小動物たちの強さと弱さを実感。「癒やしの動物園」としての同園を広めていくべく挑戦を続けている。
 
飼育員・学芸員
柳瀬 美帆(写真右)
 
東京都出身。麻布大学卒業後、動物園にて飼育員・学芸員として勤務。現在は園内イベントや展示パネル、SNSでの発信などを通じ、「動物ってかわいい!おもしろい!」そんな感動体験を入り口とした、“思い出となる学び”を来園者に提供できるよう努めている。
 
特定非営利活動法人 町田リス園
【所在地】 〒195-0073 東京都町田市薬師台1-733-1
【開園時間】平日・土・日・祝 10:00~16:00
【休園日】毎週火曜日(※祝日の場合は開園、翌平日休園)
     6月・9月・12月/第1火曜日~金曜日(園内整備)
     12月27日~1月2日(年末年始休園)
【URL】 https://www.machida-risuen.com/

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