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コラム

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■プロフィール
俳優
松島 圭志郎 KEIJIRO MATSUSHIMA

映画『関ケ原』や韓国映画『麻薬王』、現在放映中のCM「らーめん岩本屋」など、多数の映像作品や舞台に出演。現在は俳優・企業広告のプロデューサーとして活躍中。
 
Special thanks
・(株)KIYOSHI KURAHARA STUDIO ・大賀 俊勝 ・手力プロダクション …and you
 

 
 

自分を見つめ直し、光を見いだす

2023年5月、新型コロナウイルスが感染症法上で季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ移行し、長い長いコロナ禍がようやく終息へ向かおうとしています。しかし、実に3年もの間、人々の動きは大きく制限され、行きたいところへ行けない、やりたいことができない状況に、多くの人が私生活はもちろん仕事でも打撃を受けたことは間違いありません。

今回ご紹介する俳優の松島圭志郎さんも、コロナ禍によって生活が大きく変化し、これまでとは違った人生を歩むことになった1人。ですが、決して下を向くわけではなく、この時期を「自分を見つめ直す機会」とポジティブにとらえ、まったく経験したことのない“ビジネス”の世界へ身を投じ、成功を収めようとしています。逆境の中から光を見いだすには、どのような心構えが必要なのか、そして一歩を踏み出す秘訣は何なのか――新しい日々が始まろうとしている今こそ必要なことを、自身の半生を振り返りつつじっくりと語っていただきました。

生来の探求心で一直線に俳優の道へ

少年時代の松島さんは、好奇心旺盛で探求心が強く、思い立ったら一直線に突き進む子どもだったそう。俳優になるまでの道筋はユニークなものですが、それも松島さんの中ではしっかり計画立てられた歩みでした。

「小学生の頃は、ソフトボールとエリマキトカゲのものまねに夢中な、無邪気な子どもでした(笑)。中学生で大阪から広島へ引っ越して、方言や文化の違いで多少いじめに遭って、落ち込んでいた時に見たテレビドラマ『星の金貨』に心を動かされたのをきっかけに、俳優になりたいと思ったんです。それまで勉強もスポーツも何となくできる、という感じで生きていたのが、急に雷に打たれたような衝撃が走って、人に感動を与えられる俳優になろう、と自分の中で道が定まりました。そうして、まずは自分という人間を磨く必要があると思い、推薦で合格していた野球の強豪校を辞退して、自衛官だった父の知り合いから紹介された陸上自衛隊高等工科学校へ進学したんです」

8人相部屋の集団生活、上官の言うことは絶対、という厳しい環境で修業を積んだ松島さん。その中でも特に磨かれたのはコミュニケーション能力だったと言います。

「集団生活ではプライベートなんてありませんし、隠し事も一切できません。相性が悪い人とも一緒にいるほかないという環境だったので、対人スキルや対応力はそこでかなり身に付きましたね。体力面でも、レーシングカヌー部で2年生時と3年生時に全国優勝を経験するなど鍛えられましたし、本当に厳しい日々でしたが、有意義な3年間でした」

どんな現場でも対応できるスタイルを確立

部活動を引退した3年生後半からオーディションを受け始め、松島さんは俳優としてのキャリアをスタートさせます。質実剛健なキャラクターと持ち前の身体能力を発揮して、時代劇や裏社会を描く作品に数多く出演。表現者としても試行錯誤を繰り返しながら、自身のスタイルを固めていったそうです。

「長く俳優として活動する中で僕がたどり着いたのは、現場の流れや相手の出方にいつでも合わせられるようにしておくという手法でした。台本をもらったら、ものすごくゆっくり喋るパターンと、早口でまくしたてるパターンという両極端な2つを録音したり、何か他の作業をしながらセリフを言ったり、セリフの内容にとらわれず喜怒哀楽の全パターンで演技してみたり。その準備をしておけば、現場の指示や周りの動きに合わせながら、自分でも納得がいく演技をすることができるんです。現場によっては“もっと自然に”など、曖昧な指示が出されることもあります。それを必死で汲み取って演じたとしても、スクリーンを通して見た人に響かなければ、俳優の責任になってしまう。だからこそ僕は、この世界で生き残るために、自分で自分の身を守る術を磨いていったのです」

一歩引いたことで見えた新しい世界

自身のスタイルを確立し、2018年には韓国映画『麻薬王』の出演もオーディションで勝ち取った松島さん。しかし、飛躍の真っ最中ともいえるタイミングで訪れたのが、コロナ禍でした。

「それまでの僕は、脇目も振らず俳優業に集中していて、勝つか負けるか、売れるか売れないかの世界で走り続けていました。でも、世の中がこうなって、家で過ごす時間が増えていろいろな情報に触れられるようになったことで、自分がいかに盲目的に生きていたかに気が付くことができたんです。物事は白と黒だけではない、1つの見方だけではないのだと知り、より人として、俳優として成長するにはもっと勉強しないといけないと感じて――それで、ビジネスのことやお金のこと、NFT、メタバースなどジャンルを絞らず学びの目を向けるようになりました」

そんな折に、以前は俳優として一緒に仕事をした映画監督・藏原潔司氏の経営するブランディングプロモーション会社から声が掛かり、松島さんは今、新たな挑戦としてビジネスの世界に集中しているのだそうです。

「今の僕は1人のビジネスマンとして、企業の経営者様とお会いして、会社のブランディングやイメージアップにつながるようなCMをご提案しています。企画から脚本まで自分で担当して、俳優業で培ったものも生かしながら、経営者様のお力になれるよう尽力する――こんな経験はもちろん初めてですし、勉強になることばかりで毎日が充実しているんです。これは間違いなく、将来大きな財産になるので、しばらくはビジネスに集中しようと考えています。もちろん俳優業も辞めるつもりはないので、この経験を糧にして演技にも生かしたいですし、ゆくゆくは作品を1からつくる、というプロデューサー業にもチャレンジしたいです。日本には、起伏が激しく心を揺さぶるような作品は多いですが、最初から最後まで優しさにあふれる作品は意外と少ないので、“ありそうでない”ところを狙って、皆さんに愛される映画をつくってみたいですね」

水のような心で流れに身を任せてみる

1つの道に縛られることなく活躍の場を広げる松島さん。最後に、苦境に負けず一歩踏み出す秘訣を語っていただきました。

「大切なのは、“水のような心”でいることです。目の前に流れている川があって、それをせき止めて渡る方法もあるのでしょうが、自分で何とかしようと思い過ぎず、一度流れに身を任せてみると、意外と世界が自分に手を差し伸べてくれているのだと気が付けると思います。僕自身も、俳優業に固執していたら今の景色はなかったでしょう。自ら一歩踏み出す、というのはもちろん立派なことです。でも、水のように流れてみて、気が付いたら一歩踏み出している、そんな人生もおもしろいとは思いませんか?僕のこの言葉が、一歩踏み出したいと思っている皆さんの背中を押す“川の流れ”になれば幸いです」

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