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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.21

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第21回は特別寄稿編として、コロナ禍で韓国が変わったことについて、現地状況とデータを踏まえてご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、このシリーズでは皆様から特にご要望が多かったタイ国から、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と執筆を続けてまいりました。
前号では、特別寄稿編として「コロナ渦で韓国が変わったこと」と題し、2023年9月に約4年振りに訪韓をした際に垣間見た現状を述べました。今号でも引き続き、その後編として韓国における最低賃金の推移や所得格差などを包括しつつ、前編を踏まえた総まとめをお送りしてまいります。
(なお本稿において、コロナ禍での3年という期間を2020年から2022年としております)

④ 韓国の最低賃金の推移

JETROビジネス短信における、韓国雇用労働部の発表によると、2020年の最低賃金は前年比2.87%増のKRW8,590であり、2022年ではKRW9,160、2023年ではKRW9,620とのことでした。※1(9月20日現在の為替レートはKRW1,000≒¥111、ちなみに2020年9月9日のレートはKRW1,000≒¥87)これら最低賃金の影響を受ける労働者は、就業人口のおおむね17%(約350万人)になると推計されています。

韓国の場合には、現代、三星、SKなどの超大手企業に勤務する場合には、日本と同等あるいはそれ以上の賃金を得られます。しかし、それ以外の企業や中小企業への勤務者は、超大手企業の50%から多くても60%程度の年収しか得られません。したがって韓国では、いまだに小学校から毎晩遅くまでさまざまな塾に通い、厳しい受験戦争を勝ち抜き、ソウル大学、高麗大学、延世大学に合格し、超大手企業や高級官僚を目指す流れが強く残っています。それでも大手企業や外資系企業に勤務できるのはごく一部の学生で、ほとんどの新卒者は就職難に直面し、フリーターや定職を持たない層を形成しています。

⑤ 韓国の所得格差の現状

1997年のアジア経済危機以降、韓国では貧困と所得格差が社会的な問題として浮上し、コロナ禍におけるパンデミックがその格差をさらに拡大させる新しい要因にもなっています。

少し古いデータではありますが、OECDのPOVERTY RATEのデータを見ると、OECD加盟国でデータ利用ができる34ヶ国の平均貧困率が11.7%であるのに対して、韓国は平均16.7%(ワースト5位)、高齢者貧困率は43.4%にも達しています。※2

さらに、世界不平等研究所(WORLD INEQUALITY LAB)が発表した世界不平等報告書2022によると、韓国の上位1%の超富裕者層の所得が、全所得に対する割合の14.7%を占めています。さらに上位10%で見ると、全体の46.7%をも占めており、富裕者層と貧困者層の格差がかなり大きいことが明らかになっています。※3

韓国で高齢者の貧困率が高い理由としては、韓国の公的年金である国民年金の歴史がまだ浅いことが挙げられます。1988年に国民年金制度が導入され、1999年にやっと国民皆年金にまで拡大したばかりであるため、加入期間が短く、今の高齢者はもらえる年金額が少ないのです。また現在、国民年金の老齢年金の受給率は約38.5%と低く、国民年金の恩恵を受けていない高齢者が多いことも、高齢者貧困率を高めている理由の1つになります。さらに企業における60歳定年が最近義務化されたことも、それに拍車をかけていると感じます。

公的年金の給付面において成熟していない韓国では、多くの高齢者が自分の子どもや親戚からの仕送りなど、私的な援助や所得移転に依存して何とか生活を維持してきました。しかし、日本以上に少子化が進んでいることから、韓国統計庁の将来人口推計2017~2067によると、高齢者1人を支える現役世代の数は1970年の17.5人から2020年には4.6人まで急速に低下、さらに2065年には1.0人になることが予想されています。※4

⑥ まとめ

今回の訪韓でも実感しましたが、街中のレストランやスーパーを見ても明らかにすべての商品価格、食品価格がコロナ禍の前より上昇しています。そのため、高齢者の方でショッピングをしていたり、食事を取られていたりする方の数が以前よりも減少していました。また車社会の韓国ではなおさらだと思いますが、ガソリン価格や駐車場料金も高騰しており、日々生活をしている市民の懐具合を悪くしているのです。コロナ禍での外出自粛によって、夜のレストランでの食事やお酒を飲むことも自粛している人が多いことから、以前の威勢のいい韓国人からおとなしい韓国人という、イメージの移り変わりを強く感じました。

ここまであまりポジティブな印象ではない文章を書いてきましたが、それではこのような韓国との良いビジネスチャンスはもうつくれないのか、ということに対しては筆者はそのようには感じませんでした。なぜならば、日本と年収所得ではほぼ同様かそれ以上の所得を得るビジネスマン層も現れ始め、レストランでもスーパーでも百貨店でも、日本と同様の価格帯になっていることがわかるためです。

また、日本企業が実はあまり参入できていない分野が、まだまだたくさんあることも見て取れます。韓国人には、日本や世界で売られている優れた商品、品質の良い商品を見分ける鋭い眼力があることから、これからも韓国を1つの重要な市場として捉えていくことができると思いました。

いかがでしたでしょうか。今回の韓国滞在は1週間弱と短期間ではありましたが、少しでも読者の皆様に現在の韓国の状況をお伝えできたら嬉しい限りです。次号(2024年3月号)では先にお約束した、「私たち日本人が海外赴任をした際、どうすればうまく日々の生活や業務をこなせるのか」という点について、これまでの経験をもとに筆者なりの結論が出ましたのでその総集編を述べたいと思います。どうぞお楽しみに。

※最近、海外出張、海外赴任前のビジネス英語研修や経営を含めた国際教養研修をご希望される企業様が増え、多くのお問い合わせをいただいており、筆者として大変感謝しております。すぐに明日から、という対応が取れない場合もございますがご容赦ください。国内企業様からの国内人事処遇の再検討を依頼いただくケースも多くいただいております。ご検討されている企業・団体様がございましたら、引き続き当社ホームページのお問い合わせ欄よりご希望をお聞かせください。1つずつですが丁寧に対応をさせていただく所存です。

引用元:
※1「JETRO(日本貿易振興機構)」より
※2「OECD POVERTY RATE」より
※3 「世界不平等報告書2022(World Inequality Report 2022)」より
※4 「韓国統計庁 将来人口推計2017~2067」より

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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