一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

コラム

オフを充実させ、より良いビジネスライフを! 大人が楽しむアウトドア考

キャンプやサバイバルに関するアウトドアスクールを主催しているイナウトドア合同会社の森豊雪代表が、アウトドアの魅力をお伝えする連載コラム。今回は、アウトドアとも関係があり、将来的に深刻化が懸念されている地球温暖化の問題を取り上げる。地球温暖化についての説明から、同氏の私見やエビデンスを交えた対策まで、さまざまな観点から論を展開していく。
 

◎そもそも地球温暖化とは何か?

世間で地球温暖化がしばしば話題に上がるようになったのはいつ頃からだろうか?時間をさかのぼってみると、気候科学者のジェームズ・ハンセンが1988年に米上院公聴会で地球温暖化に警告を発したことが大きな契機となったようだ。それ以降、この問題については各国政府や学者たちの間でさまざまな議論が交わされている。今回はまず、そもそも地球温暖化と言われている現象はどういったメカニズムで起きているのかを考察してみたい。最初に、地球の気温はどのように保たれているのかについて見ていこう。

地球は太陽からの熱エネルギーを受けており、その熱は地球側からも宇宙に放射されている。ただ、すべてが放射されてしまうと地球は冷え込んでしまう。それを防ぐ役割を果たしているのが温室効果ガスであり、主に二酸化炭素やメタンなどが該当する。それらが一部の熱を吸収して宇宙に逃げる熱を抑える役割を担っているのだが、増え続けると地表の温度が上がってしまったり、異常気象を巻き起こしたりしてしまうのだ。それが地球温暖化という問題である。

現在、地球温暖化対策の1つとして、温室効果ガスの中でとりわけ二酸化炭素の排出量を低減するために化石燃料の使用を減らすべきだという議論が起きている。とはいえ、そもそも二酸化炭素の排出量が少ない国からすれば、大量に排出している国が率先して対応すべきだというのが率直な意見だろう。また当然ながら、地球の環境問題は温暖化だけではない。だいぶ前から日本では少子化で国民の数が減っていくことが懸念されているが、それに反比例するかのように世界全体の人口は増え続けている。当然ながら、人口が増えれば食料危機などの問題も生じる。現在、世界で10人に1人が飢餓に苦しんでいる。食料問題は、人間のみならず地球に住む動植物などの生態系にも影響を及ぼし、地球温暖化にも匹敵するほど深刻だ。

◎持続可能で成長する社会を実現するには

近年、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」という言葉を耳にすることが多くなった。「気候変動に具体的な対策を」「貧困をなくそう」「安全な水とトイレを世界中に」など、2030年までに達成すべき全部で17項目の開発目標が2015年に国連総会で採択され、SDGsと略されている。その一方で「経済成長は続けなければいけない」ともされており、私自身も現在の経済・文化レベルは維持してほしいと思っている人間の1人だ。

しかし、持続可能な開発目標と経済成長を並行して考えた場合、はたしてそれらは両立可能なのだろうか?例えば、技術革新によって持続可能な状態をつくり出すことはできるかもしれないが、それは環境に大きな負荷をかけることにつながる恐れがある。また、地球温暖化の問題が本当に産業革命以後の温室効果ガスの排出量の上昇によるものだとすれば、いまや化石燃料の話だけで済むとは思えない。一口に化石燃料を減らすと言うが、例えば石油化学製品に関してはどうするのだろう?私たちの暮らしに、石油化学製品はあふれている。炭素を使った燃料を抑えるとなると自ずと石油化学製品の使用も制限されることになり、さまざまな製品の生産にブレーキがかかることにはならないだろうか。

この点に関しては、国土交通省による国民の意識調査で興味深い結果が出ている。それによると、「『脱炭素に向けた取り組みは、暮らしを豊かにする』との考え方に賛同する人は40%、賛同しない人は40%であった一方で、『脱炭素に向けた取り組みは、暮らしを不便にする』との考え方に賛同する人は37%、賛同しない人は45%であった。脱炭素に向けた取り組みが個人の暮らしや生活の質に与える影響については、人々の意識が分かれていると考えられる。また、国際比較調査によると、気候変動対策はおおむね生活の質を向上させる機会であるとの考え方に賛同した人は多くの国で過半数を超えているが、日本では少数派にとどまり、異なる傾向となった」(以上、「国土交通白書2023」より引用)というのだ。日本では、先述した私の懸念を共有している人が多いということなのだろうか。

ところで、地球温暖化について議論するうえで知っておきたいことの1つに、人間の体は摂氏何度まで耐えることができるのか、というものがある。人間の深部体温は、一定の温度範囲を保つように自律神経によって調整されている。そして、一般的には体内酵素の働きが変化したり、たんぱく質が変性したりすることによって細胞に影響が出るため、42℃が限界と言われているのだ。もちろん、その体温のままで生き続けることは不可能ではあるが。

◎「カーボンニュートラル」という概念

地球温暖化を防ごうという動きの1つとして、「カーボンニュートラル」というものが挙げられる。これは先述した「脱炭素」と似た概念だが、一般的には化石燃料などの使用を抑制することを「脱炭素」と呼び、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる取り組みを「カーボンニュートラル」と呼んでいる。

具体的には、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林や森林の管理などによる「吸収量」を差し引いて、実質的に温室効果ガスが増えない(ゼロにする)ことを目指すやり方だ。二酸化炭素を排出する原因は、何も企業活動に起因するものだけではない。いうまでもなく、個人個人の生活でも排出されている。例えば、私の生活に関していえば、たき火もその1つに挙げられるだろう。他方で、先ほどのカーボンニュートラルの概念にのっとれば、次のようにも考えられるのではないだろうか。

たき火をすることで二酸化炭素が発生する→まきが必要になる→そのために森林が必要とされ、また管理される→森林の光合成によって二酸化炭素が吸収される・・・。こうしたサイクルを思い浮かべることは、都合の良い個人の自己満足にすぎないだろうか?
とにもかくにも、地球で暮らす者の1人としては、気候変動などによって生物が生活できない星にはしたくないと強く思わずにはいられない。

▶イナウトドア(同)では親子向けスクールや焚き火体験なども行っております。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
 
https://www.inoutdoor.work/school
■プロフィール
森 豊雪

学業修了後はエネルギー関連の製造会社に入社し、30年以上にわたって勤務する。55歳を迎えて新しい道を模索。もともと趣味で活動していたアウトドア分野で起業することを決意し、イナウトドア(同)を立ち上げた。現在は、オリジナルアウトドアグッズの開発や、サバイバル教室などの展開、自然保護のボランティア活動に注力している。
 
※保有資格
・NCAJ 認定 キャンプインストラクター
・JBS 認定 ブッシュクラフトインストラクター
・日赤救急法救急員他
■企業情報
イナウトドア 合同会社
〒238-0114
神奈川県三浦市初声町和田3079-3
■URL
https://www.inoutdoor.work/
■X(旧Twitter)
@moritoyo1

 
 

<< 第27回 長時間動き続けることの過酷さ第29回 アウトドアを楽しむための服装選び >>

躍進企業応援マガジン最新号

2024年5月号好評販売中!