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コラム

企業経営の黄色信号が灯った時―その際の注意点

どんなに順風満帆な企業であっても、将来事業の業績を悪化させていく可能性のある要因は必ず存在するもの。それらは経済、マーケット、地政学的なことなど外部の事象に起因するものと、各企業の内部に原因があるものとに大別できる。この連載では、内部的な要因で企業業績を将来悪化させていく可能性のある事象を、「企業経営の黄色信号」と呼んでいく。それを踏まえて、「CONCERTO」の代表で経営アドバイザーの荻野好正氏が、定性的な面と財務的な面からのアプローチで、経営者として気を付けるべきことや、いかに企業の「黄色信号」を認識していくべきかについて解説する。最終回は、経営数値の黄色信号を見つけるためのポイントに関して論を展開していく。

当連載も、いよいよ最終回になります。これまではどちらかというと定性的な黄色信号についてお話ししてきました。今回は定量的(経営数値)な黄色信号を見つけるために参考になることをお話ししたいと思います。

財務諸表

企業のオペレーションの状況を計数的に表しているのが財務諸表です。この中にはありとあらゆる経営情報が含まれています。経営者はこれらの計数情報を駆使して日頃の経営や将来の計画、目標設定などをしていくわけです。財務分析などを詳しく知りたい方は、ぜひその分野で出版されている書籍などをお読みください。ここでは、財務諸表から読み取ることができる黄色信号について少しお話ししたいと思います。

もちろん、ここで説明させていただく指標以外にも大切なものがたくさんあります。簡単なものでは、売上高の伸び率が連続してマイナスになっただとか、営業利益率が思ったように上がってこないなども、会社の状況が思うような方向にいっていないということですから、これらも黄色信号だと言えるでしょう。それを踏まえて、黄色信号を見つけるのに適しているいくつかの指標を紹介していきます。

フリーキャッシュフロー

前回の連載でも詳しく説明しましたが、やはりフリーキャッシュフロー(FCF)が会社の状況を一番正直に表している指標です。何か大きなプロジェクト、設備投資が必要な時に投資金額が大きくなり、FCFが赤字になるというのはありうることで、決して悪いことではありません。

ただし、適切なコントロールがなされないまま投資が大きくなり、その状態が何年も続くということであれば、それは黄色信号です。経営戦略を見直す必要があるでしょう。もちろん、営業キャッシュフローが赤字になるというのは、あってはならないことですから黄色信号だと認識してください。

自己資本比率・DER

「自己資本(純資産)÷総資産」を自己資本比率といいます。会社の総資産のうち何%が自己資本でまかなわれているかを表す指標です。業種や業態によって標準的な比率は大きく変わるので何%なら良いとか悪いとか、何%以上あれば十分だということはできませんが、通常、自己資本比率が10%以下になると、これは黄色信号と言ってもいいのではないかと思います。

関連する指標として、DER(Debt Equity Ratio=借入金・自己資本比率)=「総借入金額÷自己資本」があります。大手企業の場合には、DERが1.0を超える(すなわち、自己資本金額以上の借入金額がある)と危険水域と言われることが多いです。ただし、中小企業の場合は、比較的少額の自己資本(資本金)の場合が多いので、必ずしもこの1.0が当てはまるとは言えませんが、この数値が大きくなればなるほど借入金が過多ということになりますので、よく見ておくべき指標ということになります。

CCC=キャッシュ化速度

CCC(Cash Conversion Cycle)とは、企業が使った資金を、営業をすることによってどの程度の早さで回収しているかを示す指標です(売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入れ債務回転日数)。簡単な例で説明しましょう。

商社をイメージしてください。100円の商品を現金で仕入れて、3ヶ月在庫として保有し、その後販売して1ヶ月で代金を回収したとします。現金で仕入れるのですから、仕入れた段階で100円の資金負担が始まります。その後3ヶ月間は在庫として保有した後に、売り上げし、その後1ヶ月で代金の回収をするわけですから、当初の仕入れの時に支払った100円を回収するのに、「在庫期間の3ヶ月」+「売掛金回収期間1ヶ月」で、このビジネスのCCCは4ヶ月ということです。これを短縮するために、仕入れ代金の支払いを1ヶ月後とし、在庫期間を2ヶ月に短縮、売掛金回収を0.5ヶ月に変更したとすれば、「買掛金支払期間のマイナス1ヶ月」+「在庫期間の2ヶ月」+「売掛金回収期間0.5ヶ月」で、この場合のCCCは1.5ヶ月ということになります。後者のほうが、資金負担が楽になることがおわかりになるでしょう。

会社のCCCが年々大きくなってくると、会社の資金効率は当然悪くなります。したがって、毎年のCCCの日数が継続的に長くなるというのは、黄色信号を意味することになるのです。ぜひとも御社のCCCを計算してみてください。

設備投資と償却費

会社経営では、設備投資は償却費の範囲内に留めて、会社を成長させるべきであるとよく言われます。もちろん、特別大きな投資がある時にその年の償却費を越えてしまうことはありうること。これを否定するものではありませんが、複数年度にわたって「設備投資金額>償却費」の状況が続くことがあれば、黄色信号が点滅し始めたと認識してください。

流動比率

会社の短期の財務の安全性を図る指標で、「流動資産÷流動負債×100」で定義されます。細かい説明は省きますが、バランスシートの流動資産合計と流動負債合計を入れることで簡単に計算できる便利な指標です。流動資産とは1年以内に現金化ができる資産、流動負債というのは1年以内に支払い期限がくる負債のこと。この指標が100%以下になっているということは、1年以内に支払うことになっている負債(買掛金や借入金の返済金額などの合計)が1年以内に現金化できる資産(現金、回収予定の売掛金、販売可能な在庫など)を大幅に上回っている状況ということ。1年以内の負債を払いきれなくなる可能性があります。通常、この指標が100%を下回ると短期的な財務安定性に黄色信号が灯っていると判定すべきなのです。

おわりに

全6回の連載もこれで終わりになります。お読みいただいた皆様、ありがとうございました。皆様の会社経営の何らかの参考にしていただけたら幸いです。

■著者プロフィール
荻野 好正

おぎの よしまさ / 大阪府出身。伊藤忠商事(株)にて30年間勤務、曙ブレーキ工業(株)で15年間の役員勤務を経験。その後、海外を含む企業勤務・経営を通じて得られた企業経営のノウハウを中小企業、スタートアップの企業経営者に伝授することを目的に、企業経営者へのアドバイザリー業務を「CONCERTO」(個人事業)として立ち上げた。中小企業、ベンチャー企業の強化こそが日本経済を立て直す原動力になると信じる。静岡大学工学修士、米国シカゴ大学MBA。
 
CONCERTO
〒100-0005
東京都千代田区丸の内2-2-1岸本ビルヂング6F
https://c-concerto.com/

 
 

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