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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.9

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第9回は、前回に引き続き中国人についてお話しします。

はじめに

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載しております。

さて前回に続き、今回も日本企業が日本人駐在員を一番多く派遣している中国でビジネスを行うポイントについて、後半部分のお話を進めていきます。

まずは前回のおさらいから。外務省ホームページ「海外在留邦人数調査統計」2020年調査統計によると、10月1日現在で中国に在留している邦人は永住者を含め約11万人。中国に進出している日系企業の拠点数は33341拠点。その70%以上にあたる24622拠点が在上海総領事館管轄のエリアに進出しています。業種でいうと製造業が圧倒的に多く、その次が卸売業・小売業となっており、中国に進出する企業の多くが、製造現場を持つことを目的としていることが明らかになっています。

中国は、日本の25 倍以上の国土に約14億人が暮らし、人口の約90%を占める漢民族と、50 以上の少数民族によって構成されています。より良い給与と労働環境を求めて中国東部にある沿岸沿いの大都市にさまざまな文化的、風習的、民族的、信仰・宗教的背景を持った人々が中国全土から集まり、その最大の中心地が上海エリアであると言って間違いないでしょう。

筆者は今日に至るまで、中国現地に駐在こそしていなかったものの、かなり多くの地域・都市を訪問し、製造業、卸売業、小売業、サービス業等の日系中国企業とのビジネスに携わってきました。その中で、中国人ビジネスマンの性格・気質というものは、これまでに触れてきたアメリカや韓国、タイの人々のそれよりも若干、わかりやすいという印象を受けます。前号では中国人ビジネスマンの主に共通した性格・気質を5つのポイントでまとめてみました。

ここからは、中国人ビジネスマンといかに日々コミュニケーションを取り、お互いに極力誤解や理解の不一致をせず友好的な関係を築きながら仕事を進めるためにはどのように対応していけば良いかを、具体的にご紹介していこうと思います。

① 物事をはっきりさせる

私たち日本人は、社内でも社外の取引先でも、中国人ビジネスマン同様に5W1Hを念頭に置き、短く簡潔にコミュニケーションを図る必要があります。自身の方向性、考え方、結論をなるべく先に話し、YES / NOについては特に明確にしながら会話を重ねていくのが良いでしょう。

また、相手が話したことに関してはメモ用紙に走り書きするのではなく、コミュニケーションの内容や日時を1つずつきちんとノートに記載して、ミーティング終了時や後日、いつでも必要に応じて一緒にフィードバックできるようにしておくことをおすすめします。

② 自己主張が強い

こちらに関しては、まず“聞き上手”になって相手の主張や意見、希望、そして最終的な落としどころ、結論をじっくりと聞いてあげること。それから、会社や自身の部署やチームのそれぞれの仕事の目的と計画を再度説明をし、相手の主張に基づいて仕事を進めた場合のメリット・デメリットについて一緒に考えてあげるようにすることが重要です。あくまで冷静に、オープンマインドで対応することで、中国人ビジネスマンも自分の発言した内容についてそれぞれ良し悪しを判断しながら進めていける「気持ちの余裕」を持てるようになると思います。また、この場合も①で触れたのと同様に、お互いの主張や意見をきちんとノートテイキングすることが大切なポイントだと言えるでしょう。

③ 効率性を追求する

効率性を追求する際には、相手がどこに効率性を求めているかを具体的にしつつ、5W1Hを明確にしてノートに書き記し、会社や自身のチームのやり方で進めた場合とどのような違いが生まれ、効率性の面で生じるメリット・デメリットを可視化したうえで検討することが重要です。「今まで会社ではこのようにしてきたからこうしてほしい!」という言い方は極力回避し、メリットがデメリットより多いならば、なるべく相手の主張に耳を傾けることに積極的な姿勢を持つようにしましょう。

④ その場対応がある

その場対応があることについて、これは業種、業界を問わず、ある程度は致し方ないことです。どのようなプロジェクトでも、大がかりな仕事になればなるほど、当初に想定していた机上の計画と実際の現場との間には、温度差や仕事の進め方のズレが生じます。ここで大切なのは、計画や予定と余程大きなズレや目標との乖離がないような場合には、ある程度の柔軟性を持って「その場対応もアリだ」という考えを持っておくことです。ただ、事前に報・連・相は必要であることと、製品をつくる場合など、絶対に当初の計画や内容と変えてはいけない部分を分けることは忘れずに。

⑤ 体面や体裁を気にする

最後に、中国人ビジネスマンの場合は特に自分の体面や体裁を非常に大切にします。他のスタッフの眼前で大きな声で叱ったり、怒鳴ったりすることは論外であり、それは日本人スタッフの間でも同様です。あくまで大きな心を持って胸襟を開き、叱る場合でなくても相手と込み入った話や細かいことについての話をする場合には必ず1対1で行いましょう。

話し始めはポジティブな点からストーリー展開し、ネガティブな点についてはどうしたら改善できるか一緒に具体策を考えていくのが賢明なやり方です。特に、同じ会社に所属する者同士なら、中国人スタッフが良い成果を挙げた場合や目標をクリアした場合には一緒に笑顔で喜び、逆に仕事がうまく進まない時には一緒に寄り添い笑顔を忘れずに粛々と考えていく姿勢が1つの理想像だと思います。

このようなやり方はストレスが多く溜まるかもしれません。しかい、それをうまく管理できる人間力の強さと、冷静沈着にいられるだけの器を自分自身が努力して身に付けることも大切なのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。中国人の気質や考え方と、その対応方法や心がける点をまとめてみました。次号からは、日米豪印のクアッド構想の1か国であり、日系企業が約1500社近く(約5,000拠点)進出するに至った“神秘の国”インドにフォーカスし、インド人気質とインドでビジネスを行うポイントについて2号にわたりお話を進めてまいります。どうぞお楽しみに。

(次号へ続く)

■プロフィール
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長
小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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