注目企業インタビュー
効率と品質を両立させるスマート畜産
伝統を守りつつ未来を切り開く3代目の挑戦
新技術の導入で効率と品質を両立
矢部 牧場のお仕事は、早朝からの作業があって大変な印象があります。
及川 確かに朝は早いです。ただ、2023年に自動搾乳ロボットを導入してから、状況は大きく変わりました。牛が自ら機械に入って搾乳される仕組みなので、24時間ほぼ自動的に管理できるんです。畜産業界は人手不足の問題が深刻ですから、AIやロボットには本当に助けられています。
矢部 まさにスマート畜産ですね。私自身も、日々の仕事で新しいことを取り入れる大切さを感じているので、とても共感します。今の時代ならではの挑戦だと思いますよ。
及川 おかげで従業員の負担も軽減され、他分野にも時間を割けるようになりました。自動化により人と牛の接触は減りますが、首輪型の行動計測器が異常行動を検知することで、早期に体調不良などの変化を発見できます。
矢部 効率と品質を両立されているのは本当にすごいですね。現在、牛の頭数はどれくらいですか?
及川 約350頭です。私が代表取締役を引き継いだ当初は200頭ほどでしたが、自動化の推進に伴って増頭に踏み切りました。7人という少人数で管理していますが、乳量は全国でもトップクラスを誇っているんです。また、乳質にもこだわっていまして。同じ餌を与えても牛によって乳質や乳量は異なるので、そこで遺伝子検査を行い、乳脂肪が高い牛や生産性の高い牛など、状態の良い個体をしっかり残していくんです。その他にも、父のこだわりを受け継いで飼料はすべて自給で、コスト削減はもちろん、牛に与える栄養を自在に調整できる点も強みですね。
矢部 なるほど。伝統と先端技術の融合で、品質を高めているのですね。(株)及川牧場さんでは、乳牛だけでなく肉牛の飼育もされているとか?
及川 そうなんです。和牛の受精卵をホルスタインに移植し、生まれた子牛を2ヶ月ほど育てて市場へ出荷しています。さらに2024年からは、富良野の観光需要を背景に一棟貸しの宿泊事業も始めました。おかげさまで、冬は稼働率90%以上、夏も海外からのお客様を含め多くの方にご利用いただいています。
矢部 牧場の可能性を多角的に広げているのですね!和牛の育成から宿泊事業まで、地域を盛り上げようと活動されているのが素敵です。
及川 はい、酪農を基盤に肉牛や宿泊業を組み合わせることで、地域に貢献できる持続可能な経営を目指しています。
伝統を継承しつつ未来を切り開く
矢部 代々受け継いできたものを大切にしながら、さまざまなことにチャレンジしている及川社長。やはりやりがいも大きいのではないですか?
及川 もちろんです!こだわっているぶんやりがいを得られますし、何よりお客様に喜んでいただけた時が嬉しいです。
矢部 とても素敵です。スタッフの方々との関係性についてもお聞かせください。
及川 自分は主に管理やサポートを担い、現場はなるべくスタッフに任せるようにしています。そのほうが責任感を持って働いてくれますし、私自身も新しい挑戦に時間を割けるんです。
矢部 皆さんの成長を見守りながら、経営者としての視野を広げておられるのですね。今後実現したいことは何でしょうか?
及川 今の目標は「6次産業化」で、例えば、生産した牛乳を使ったチーズやバターのような商品を製造し、お客様に直接お届けしたいです。まだ準備段階ですが、将来的には「及川牧場」のブランドを確立し、富良野から全国へ発信したいと考えています。宿泊事業も含めて、伝統を守りながら新しい技術や発想を積極的に取り入れ、常に前進していきたいです!そういった活動を通じて、地域の魅力を発信する一助にもなれば嬉しいですね。
矢部 新技術の導入や事業の拡大、環境づくりなど、すべてにおいて大胆かつ柔軟に取り組んでいる姿に感銘を受けました。成功を引き寄せる行動力とバランス感覚に、アスリート精神を垣間見た気がします。今後も富良野から全国へと、酪農の魅力を発信していってくださいね!
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