注目企業インタビュー
海外で培った豊富な経験からアプローチ
繊細かつ丁寧な調教で大井競馬を賑わす
より良い馬づくりのため細心の注意を払う
矢部 夢だった調教師になり、「森下淳平厩舎」としては15年目ということですが、日ごろどのような思いを持って仕事に取り組んでいらっしゃいますか?
森下 シンプルに、与えられた環境の中でより良い馬づくりを追求していきたいと思っています。馬主様から競走馬という大切な財産を預かっているわけですし、その馬もちゃんと魂と感情がある1つの命であり、自分たちのためにがんばって走ってくれる存在です。だからこそ、馬主様の思いを尊重するとともに、馬の感情にも大切に向き合う姿勢を徹底しているんですよ。
矢部 それは素晴らしい。馬主さんと馬、双方に誠実に接していらっしゃるのですね。
森下 ええ。また、馬はとても体が大きいですし、装蹄の調整が1ミリずれるだけでも調子がくずれてしまうほど繊細な生き物です。そのため調教時にはできる限り無理をさせず、人も馬もけがをしないようにと、丁寧に扱うことを心がけていますね。飼葉の与え方についても、1回に与える量を減らし、その代わり回数を増やすことで内蔵に負担がかからないようにするなど、観察に基づいて工夫しています。
スタッフが夢を持てる厩舎をつくりたい
矢部 森下先生の思いを実現させるには、一緒に働くスタッフの方々の役割も大事になってきますよね。
森下 そうですね。皆と共に一生懸命、レースに向けて何百時間もかけて馬のコンディションを整えていきます。今は女性スタッフも働いてくれていますが、もうすっかり1人前になり、戦力としてとても頑張ってくれています。
矢部 スタッフの方々に対しては、普段どのように接することを心がけていらっしゃいますか?
森下 一般的に調教師というと、職人気質でどこかとっつきづらいイメージもまだまだ強いと思います。確かに馬に最高のケアを施すためにはそうした面も必要だと思うのですが、あまりに厳格すぎても、皆がしんどい思いをしてしまいます。そうした思いをさせないためにも、私はスタッフの皆の思いに寄り添って働きやすい環境をつくり、仕事に夢を持たせてあげたいとチームづくりを見直しているところです。例えば、馬づくりに関して私から最初に方向性は示しますが、主な作業についてはスタッフにある程度任せてしまっています。失敗しても、そこから皆がやりがいを見つけて学んでいってくれたら、それで十分なんです。
矢部 主体性を持って自分の判断で仕事ができるのですから、その日々の積み重ねが、皆さんの自信にもつながりますよね。
森下 矢部さんのおっしゃる通りだと思います。これからもコミュニケーションを大切にしつつ、どんどん仕事を任せていけたら嬉しいですね。また、私どもの厩舎では、皆で同じ目標を目指して支え合っていけるような働きがいのあるチームづくりを行うために、この業界ではめずらしいコーチングも、外部からコーチを招き入れて導入しているんですよ。
矢部 プロコーチングの方が入ることで、よりチームワークが深まっていくというわけですね。ご自身の目指す環境づくりを実現されていて、やりがいもひとしおでしょう。
森下 ええ。心身健全で、馬が本来持っている能力を存分に引き出してあげたいというのが私の馬づくりの信念です。やはり自分たちの思うような馬づくりができて、大きいレースに勝った時の達成感は何物にも代えがたいですね。スタッフにも、そうした楽しさやりがいを伝えていきたいと思います。また、その過程でスタッフの成長を実感できた瞬間も、とても充実感があるんですよ。今後も皆で支え合いながら馬づくりに力を注ぎ、G1格のレースに勝てる馬を、そしていずれは、海外に行っても勝負できる馬を育てたいと思います!
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