コラム


人生100年時代と言われ、仕事でもプライベートでも、自分の夢や目標を達成するまでには長い時間が残されているように感じられる現代。しかし時間の有限性を意識せずにぼんやりと過ごしていると、時というものはあっという間に過ぎ去ってしまう――そんな着眼点から、時間をいかに有意義に使うかを助言しているのが、Time Craft Consultantの奥村哲次氏だ。当コラムでは、大病を乗り越え自らの決意と行動によって成功をつかんできた同氏から、ビジネスに必要不可欠な「マインドセット」について学んでいく。
皆様、いつも大変お世話になっております。(株)ラフティ代表取締役、奥村哲次です。今回のテーマは、「時間 × オブジェクト指向」。ITの世界で生まれた“オブジェクト指向”という考え方を、人生そのものに応用したとき、どれほど幸福度が高まるのか──そんなお話をさせてください。
私はこれまで、がん(ステージ4)、狭心症、頚髄損傷といった命を揺るがす病やケガを経験してきました。人生は驚くほど短く、予測不能です。今日がいつも通りでも、明日はまったく違う景色になっているかもしれない。だからこそ私は、時間の使い方こそが幸福になるための最大要因だと考えています。そして、人生を“どう設計するか”という視点に、オブジェクト指向は大きなヒントをくれました。
時間は「設計」できる
オブジェクト指向とは、物事を「オブジェクト(対象)」として捉え、それぞれの役割を明確にし、再利用していく考え方です。実はこの発想、人生にもそのまま応用できます。例えばスマートフォン。電話・メール・カメラ・音楽・メモなど、本来バラバラの“行動”だったものを1つのデバイス(オブジェクト)に統合し、再利用性を高めたことで、私たちは圧倒的に便利な生活を手に入れました。人生も同じです。「一度の行動に複数の価値を持たせる」、この発想で時間の密度は大きく変わります。
日常に潜む“複数処理”の宝庫
例えばトイレに行くという行動を、「用を足して終わり」とするのではなく、オブジェクト指向的に捉えると、通路にある物を確認する(整理の習慣)、使ったものを必ず元に戻す(秩序の維持)、次にやるべきことを思い出す(思考の準備)など、「自分の心を整えるための時間」や「未来に向けた準備」という複数の意味を持たせることができます。他にも、誰もが必ず行う「歯磨き」の時間で、今日やることを頭の中で整理する、明日の予定をイメージして準備を整える、感謝したいことをひとつ思い出す――これだけで、1日2〜3回の歯磨きが“人生のリセット時間”になるのです。
習慣化=プログラムの再利用
ITの世界では「関数」や「クラス」を使って、一度つくった処理を何度も再利用します。人生で言えばこれが「習慣」にあたります。私は闘病を通して、体力と時間の有限性を痛感しました。だからこそ、余計なことに消耗しないために、日常の“コード化”を進めました。朝の身支度はシンプルな型にする、メール処理は時間帯を決めて一気に片付ける、サーフィン前日は道具を必ず整えておく。特に、サーフィンに行く時の“オブジェクト化”は象徴的です。「サーフィンに行く」=道具の準備+移動中の学び+アイデア創出+メモ化。すべてが1つの“行動”の中に組み込まれています。これは効率化のためだけではなく、有限の時間を有効に使うための“仕組み”です。
透明サーフボードも、時間への意識から生まれた
私が廃ペットボトルを使って透明サーフボードを開発したのも、根底には「残された時間で社会に恩返しをしたい」という思いがありました。海に育てられ、サーフィンに救われてきた28年だからこそ「環境を守りながら未来につながるもの」をつくりたかった。それが、2500万円と5年をかけて生まれた「Sea Through」でした。これはモノづくりではなく、人生をどう使うかについての“答え”でもありました。
音声メモAIアプリは時間を増やす技術
もう1つの例が音声メモAI要約アプリです。着想のきっかけは「記録に使う時間を減らしたかった」から。会議の議事録は自動生成。運転中のアイデアは声でそのままメモ。長文は要点だけ受け取れる。つまり、本当に大事なことに集中できる時間を増やすためのツールとして開発したのです。
さらに私は、このアプリを“企業ごとのナレッジ基盤”に進化させる未来を描いています。議事録がカテゴリごとに蓄積され、夜間にAIが自動で要点を再構成。最新の社内Wikiとして可視化されることで、新人教育やマニュアル作成、同じ質問への対応に活用できるようになります。これにより、人が時間を奪われてきた業務が一変するのです。
人生はプロジェクト、だから設計が必要
人生をプロジェクトとして捉えると、時間もエネルギーも有限です。だからこそ、“再利用できる習慣”を育てることが重要になります。透明サーフボードも、音声メモAIも、根本にあるのは同じ問いです。「限られた時間を、どう生かすか」「どう創出するか」。仕組みをつくり、習慣化し、再利用する。これこそ、人生を豊かにする最強のプロジェクトマネジメントだと信じています。
まとめ
「いつかやろう」と思っている間に、時間は容赦なく過ぎていきます。今日この瞬間の時間の使い方が、未来の幸福度を決定づけるのです。オブジェクト指向を人生に取り入れれば、何気ない行動に価値が生まれ、時間は“増えて”いきます。ぜひ、あなた自身の時間設計に意識を向けてみてください。その小さな一歩が、未来のあなたを確実に救います。
次回は、「神メンタルのつくり方」─―宇宙規模で物事を見ることで、心はどこまで強く、軽くできるのか。悩みや不安に振り回されず、“揺れない自分”をつくるための視座と思考法をお伝えします。
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