コラム
社員のエンゲージメントを高め、定着率アップ！
悩める中小企業を救う、実践的な人事制度の構築法とは？
少子高齢化による生産年齢人口の減少と、コロナ禍からの経済回復に伴う需要増加により、多くの企業が深刻な人材不足に直面しています。特に中小企業では一人ひとりの果たす役割が大きいため、質の高い人材の確保と定着はより重要な経営課題となっています。
しかし、経営コストが上昇する中、採用や人材育成に十分なリソースを割けない企業も少なくありません。さらに、転職を促す情報の増加や、多様な働き方の浸透により、企業への帰属意識の低下が進み、人材定着の難易度はますます高まっています。
20年間にわたって中小企業の人事課題を支援してきた著者は、人材定着には「エンゲージメントの向上」が不可欠だと説きます。エンゲージメントとは、会社と社員が相互に成長を促し合う関係性を指し、著者は数多くの企業支援を通じてその重要性を実感してきました。
本書では、中小企業の強みである組織のコンパクトさを生かした人事制度の構築法を解説しています。制度設計の基本から社内への説明方法、導入時の注意点、運用段階で生じやすい課題とその対応策、成功事例までを具体的に紹介し、人材の定着率と生産性向上に直結する実践知を提供します。
《著者Q＆A》
■人事制度を「社員の成長を支援し、心豊かに働けるようにする仕組み」と捉える視点が新鮮でした。この発想にたどり着かれるまでのきっかけや、ストーリーがあれば教えてください。
独立前の20年間で3社、会社員として日夜奮闘する毎日を経験してきましたが、どの会社も自助努力が基本のため、成績が悪い社員には退職のレールが敷かれ、反面、優秀な社員も「明日は我が身」と自分のことだけを考え、教え合って、感謝し合う文化がありませんでした。それは私にとって、魚の小骨が喉につかえているような違和感であり、どうしたら心豊かに働ける職場になるのか、禅問答が続きました。そのなかで、会社が社員の成長を支援する前提で成長度合いを評価し、その成長した力で人の役に立つことが実感できる仕組みがあれば、社員の心を豊かにすることができるかもと考え、人事制度として確立していきました。
■荻須様がお考えになる「正しい人事制度」とはどのようなものでしょうか？また、それは中小企業においてどのような役割を果たすとお考えですか？
正しい人事制度とは、社員が定着・成長し、業績が向上する人事制度のことをいいます。それは、そこで働く社員の心を豊かにし、採用難と収益難に悩む中小企業の事業継続発展に大きく寄与すると考えます。
■人事制度の構築・運用において経営者や経営層はどのような役割を果たすべきでしょうか？
「部下の成長は、上司次第」これが経営者や経営層の役割の軸になります。部下の成長を心から願い、成長した力によって、より多くの人の役に立つ実感を持ってもらうことです。そして自己重要感を高めて、ともに心の豊かさを増やす役割を果たす必要があると考えます。
■650社以上の企業に対して「正しい人事制度」構築支援を行ってきたご経験を通して、特に印象的だった成功事例があれば教えてください。
最初に訪問した際に社員同士が罵声を浴びせ合っていて、離職率90％、業績も下降をたどっていた会社が、人事制度運用の1年後には、職場に笑顔があふれ、離職率5％まで改善し、業績もV字回復した事例です。改善の軸は、社員の成長を心から願う会社の想いでした。
■本誌の読者に向けてメッセージをお願いします。
昭和時代のビジネスモデルは、自社の商品・サービスを磨くことが基本でした。しかし、我が国は1995年から生産年齢人口が減少に転じ、ますます人手不足、定着・育成難が加速しています。つまり、赤字倒産ではなく、人手不足倒産の大波がやってきています。それゆえ、自社の商品・サービスを磨くだけでなく、社員の定着と成長の仕組みが必須となります。ぜひ、本書をお読みいただき「ここで働きたいと言われる会社」をつくっていただきたいと思います。
 荻須 清司（おぎす きよし）1963年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後、住宅設備機器メーカーやエクステリアメーカーで営業・人事・法務・経営企画を経験し、M&Aや海外現地法人設立、株式店頭公開業務にも携わる。2005年に名古屋ワークスマネジメントオフィスを設立し、中小企業の経営・人事労務支援をスタート。2013年には（株）エニシードコンサルティングを設立し、人事制度構築支援を本格的に開始。これまでの20年間で中小企業を中心に650社以上を支援し、研修・セミナーの受講者は1万人を超える。特定社会保険労務士、中小企業診断士、行政書士、キャリアコンサルタント、米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナーなどの資格を所有。元名古屋商科大学大学院マネジメント研究科客員教授・経済産業省職員研修講師。 発行：幻冬舎メディアコンサルティング URL https://www.gentosha-mc.com/ 発売：幻冬舎 URL https://www.gentosha.co.jp/ |
