コラム

知識・スキル・ノウハウ―ビジネスを円滑に進めるための要素はさまざまあるが、真の成功者はそのビジネスに取り組むうえでの“マインド”を持っているものだ。そんな視点に基づき、多種多様な業界で活躍する経営者の中でも、ビジネスの「核」となりうるマインドを持つ人物にスポットライトを当て、読者が仕事と向き合う際の新たな気付きとなるような情報を発信するコラム企画。
1.顧客目線の原点
――19歳で保険営業の世界へ飛び込んだ稲葉社長。これまでのキャリアは?
最初は「キャリアがなくても努力次第で稼げる」という部分に引かれてこの仕事を始めました。社員5人ほどの小さな代理店からキャリアをスタートさせ、10ヶ月でトップセールスになることができたんです。20歳で保険を専門とする営業代行の会社を立ち上げ、複数の経営者の方から出資していただくなど順調に歩みました。しかしその後、会社の合併吸収によって社長を交代することとなり、その社長が不祥事を起こしたことでほとんど解散状態になってしまって。私も退職を余儀なくされ、顧客リストも資金も失った状態で再スタートしたんです。それが前身となる「イナバプランニングカンパニー」でした。
――大きな危機を経験しながら、保険営業の仕事を継続できた理由は?
私は仕事と向き合ううえで、常に「ここまでにこうする」というゴールを設定しているので、道中の浮き沈みはほとんど気にならないんです。すべてが計画通りに運ぶわけもないですから、その都度修正しながら進めれば良い。そうして小さなゴールを達成し続けてきたからこそ、迷いはなかったですし、保険以外の仕事をしようとは考えもしませんでした。
――今の事業の核となっている「顧客目線」はどのように培われたのか?
数多くの保険をご提案・販売する中で、保険の見直しをさせていただいたあるお客様が大病を患われ、十分な保障を得られなったという出来事がありました。電話口で「自分で選んだ保険だから仕方ないけど···」と言葉に詰まるお客様に、私も何とお声がけして良いかわからず、苦い思いをしたんです。一方、別のお客様でお若くして家業を承継した方がいらっしゃり、時間をかけてプランニングしたうえで、高額のプランにご加入いただいたのですが、数年後に事業が立ち行かなくなり、ある時その方が自ら命を絶ってしまわれて――残された奥様と3人のお子さんは途方に暮れていらっしゃいましたが、私も全力で対応した結果、7000万円ほどの保険が下り、負債をすべて清算することができたんです。それらの経験から、 「自分が提案したものは、お客様のその後の人生のコンディションを大きく左右するのだ」と確信し、それ以来、お客様の表面的なご要望にとどまらず、その方の人生設計まで一緒に考えたうえでのご提案を心がけるようになっていきました。
2.ライフプランを考える
――現在は保険提案のみならず、法人向けにはリスクマネジメントや事業継続計画支援、個人向けにはファイナンシャルプランニングや教育資金計画なども包括的に行う「伴走支援コンサル」を提供している。このサービスを手がけるうえで大切にしていることは?
何より大事なのはライフプランを一緒に考えることです。この先の人生でどんなことが起こり得るのか、それに向けて何が必要なのかということは、目の前のお客様自身も知らないんです。だからこそ、その方がどういう人生を送り、家族や従業員に何を残したいのかという部分にまで踏み込んだライフプランを共につくり、必要なサポートをさせていただきたいと考えています。例えば普通の経営コンサルタントは、今の事業がどうすればうまくいくか、という“点”のサポートをします。一方で私たちが目指すのは、事業を通してお客様が人生で何を実現したいのか、という“線”のサポートです。事業ではなく人生に寄り添う―私は真の意味でお客様の人生に伴走できるのは、保険業者だけだと思っています。
――2025年4月に「ハレノヒハレ(株)」へ社名を変更した。新しい社名にはどんな思いが込められているのか?
「人生のベストコンディションを追求する」という私たちの経営理念をよりお客様に伝えたいと考えた時、現場のメンバーにとってもわかりやすいものであるべきだと思ったんです。お客様にとっての特別な日=ハレノヒを「ハレ」にできる存在になる、そんな思いを社名に込めています。ユニークな名前にすることで、お客様が興味を持ってくだされば最高のプレゼンタイミングになる、そんな狙いもあります。
3.成功マインドを共有する
――2025年10月には書籍『大型契約が決まり続ける保険営業術』を出版した。書籍を通じて読者に伝えたいこととは?
こうしたノウハウ本は商談やクロージングなど技術面にばかりフォーカスされがちですが、私は「どうすればお客様から信用していただけるか、長いお付き合いをさせていただけるか」というマインドを持ちさえすれば、誰もが営業職として成功できると思っています。私自身がこの24年で苦労しながら一つずつ学んできた「成功マインド」を、読者の方と共有できれば幸いです。
――営業職が「顧客目線」に立つためには何が必要なのか?
これは言うほど簡単ではなくて、お客様のために行動するには、まず自分がある程度の地位を築く必要があるんです。マズローの5段階欲求※が示すように、人は誰しも「自分の生存」を優先します。それが実現できて初めて他者や社会に貢献したいと思える。私自身がどん底を乗り越えて今があるので、これは間違いなくそうだと言えます。大事なのは、自分が今どの段階にいるかを自覚して、どうすれば次のステップへ行けるかを考えることです。
――今後、会社としてどのようなビジョンを思い描いているか?
会計から企業を伸ばすというコンセプトのもと、2025年11月に会計代行の会社を立ち上げました。これまで数多くの経営者様に伴走する中で、会計を知るだけで利益が出る会社がたくさんあると感じていたので、会計面からもお客様をバックアップできればと。私たちにとってはお客様や企業様のライフプランに寄り添うことが目的で、保険は1つの手段なので、これからも保険に限らず、お客様にとっての価値創造につながる事業をどんどん展開していければと思います。
『大型契約が決まり続ける保険営業術』 稲葉 晴一
商品を売ることが目的ではなく、顧客がまだ気付いていない潜在的課題を引き出し、最適な解決策を共に描く――19歳から保険営業一筋に歩んできた著者が大切にしてきた「営業を通じて顧客の未来に伴走する姿勢」がいかにして成功と結びつくかをつづった1冊。 発行:株式会社フォーウェイ |
『大型契約が決まり続ける保険営業術』 稲葉 晴一
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