コラム

イラストレーターや声優、歌手、タレントと多彩な分野で活躍し続ける中川翔子氏と、唯一無二の挑戦で不動産業界に新風を巻き起こす日本リアライズ(株)の大橋社長。2人は携わる分野は異なれど、子どもたちや保護者、従業員、保護猫など、より多くの存在を支えたいという共通の志を持って活動を続けてきた。今回は良縁をつなぐための姿勢から子どもにとってあるべき保護者像まで、今後の日本を明るく照らすメッセージを語り合ってもらった。
大橋 孝行

マルチタレント/ 歌手
中川 翔子
2001年に「ポポロガールオーディション」でグランプリを受賞。2002年には「ミス週刊少年マガジン2002」に選出され、その後ワタナベエンターテインメントに所属。2004年より公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」をスタートさせ人気を博す。2006年、1stシングル『Brilliant Dream』でのCDデビューを皮切りに、『空色デイズ』をはじめとする楽曲をリリース。その他2011年公開映画『塔の上のラプンツェル』で主人公の日本語吹き替えを担当するなど声優としても活動。2025年には個人事務所「miracle」を設立しさらに挑戦の幅を広げる。
大橋社長は明るい「太陽」みたいな人
――まずはお二人の出会いや、お互いの印象について教えてください。
中川 母がボクシングが大好きで、名だたるプロボクサーを支援されている大橋社長とも親交があり、私もお会いしてご挨拶する機会が何度もあったんです。それがある時、プロボクサーの井上尚弥選手がメインを務める東京ドームの試合に招待していただいたことがきっかけで、より深くお話しするようになりました。その時は大橋社長の車に乗せていただき、元K-1ファイターの武蔵さんと一緒に東京ドームへ向かったんです。車内では大橋社長がボクシングについて解説してくださって、その日の試合を思い切り楽しむことができました。とても貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。
大橋 こちらこそありがとうございます。中川さんは歌手や声優など、数々の分野で先陣を切ってご活躍されていますし、テレビでも何度も拝見しています。なので、私からすると中川さんは大きすぎる存在でとても尊敬していますし、今でもお会いすると少し緊張してしまうんですよ(笑)。
中川 これまでたくさんお話ししていますけど、そんなことをおっしゃられたのは初めてですね(笑)。大橋社長は、井上尚弥選手を筆頭に歴戦のプロボクサーの方々を支えていらっしゃいます。そのようにスポンサーとして選手を支えるというのは、いろいろなお仕事に尽力して社会と戦ってこられたからできることだと思うので、私も大橋社長のことをとても尊敬しているんです。それでいて、大橋社長は笑い方が豪快で明るいから、いつも「素晴らしい太陽みたいな人だなあ」と思っています。
誠実に人と向き合い良縁をつなぐ
――お二人はご活躍されている分野は異なりますが、これまで絶え間ない努力を続けて現在のキャリアを築いてこられました。お二人は、続けてきた努力が実を結ぶためには何が大切だとお考えですか?
中川 どのお仕事においても、私は「死なない・辞めない・諦めない」ということに尽きると思っています。努力を続けていれば、その姿はきっと誰かが見てくれているんですよね。だからこそ、努力して種まきをしていたものが突然思いもよらぬ形でかなうことも十分にありえますし、それこそ自分の想像を飛び越えて成就することも珍しくありません。そうした経験ができるのは、やはり死なずに、辞めずに、諦めなかったからこそだと思うんです。
大橋 努力が実を結ぶためには、自分を信じて行動することが重要ですよね。自分を信じているからこそ、どんなに辛いことも乗り越えられると思うし、何よりやりたいことに挑戦している時の充実感に勝るものはありません。私も今まさに新規事業に取り組んでいる最中なので、きついけれど、これまでこつこつと成功体験を積み重ねてきた自分を信じて歩みを進めています。
中川 自分を信じられるというのは、素晴らしいことですよね。大橋社長は、とてもお強いんだと思います。私はか細い塔のようなプライドはあるのかもしれないけれど、基本的に自己肯定感が高くないんです。ただ、大橋社長も同じだと思うのですが、私は好きなことを仕事にできているから、今とても幸せを感じられているんですよね。本当に運が良くてここまでこれたと自分では思っています。
大橋 私も中川さんと同じで好きなことに挑戦できていますし、運が良かったと思うことが多いですね。不動産業界に入る前には明確な指針は定められなかったけれど、それまでの仕事でのご縁がつながって、自分のお客様だった方が代表取締役を務めていた不動産会社に移り、今の私があります。不動産業界で多くのお客様と触れ合うことで、「この仕事は人を幸せにできるんだ」ということを実感できたんですよ。過去の経験のすべてがターニングポイントで、良いご縁でつながっていました。しかし、良いご縁に巡り会えたのは、自分自身が目の前の仕事に誠実に向き合ってきたからだったと、振り返ってみて思います。不動産業界に入るきっかけをいただいた不動産会社の方も、私が全力で仕事に励み、実績を残していなければ出会えなかったですし、中途半端な仕事をしていたら絶対に巡り会うことはありませんでした。
中川 ご縁って不思議ですよね。それこそ、私も大橋社長と出会えたのは、母が人を信じてご縁をつないできたおかげだと思っています。もちろん、時には信じていた人に裏切られてしまった母の姿も見てきて、「どうしてそこまで人を信じられるの?」と思うこともありました。しかし、そうして信じてきちんと相手との信頼関係を積み重ねてきたからこそ、素晴らしいご縁にも巡り会えるんですよね。
大橋 そうですね。私も会社の代表を務めるにあたって、裏切られる経験を多くしてきました。しかし、私は「決して人を裏切りたくない。騙すことをするくらいなら、騙される側でいい」と考えているので、とりあえずご縁があれば、一度信じるということを大切にしているんです。そうした精神は、昔から読んできた「少年ジャンプ」の影響が大きいかもしれないですね(笑)。やはり、私は何があっても人を信じられる魅力的な主人公のような存在でありたいんです。
最高の抱っこで子どもの自己肯定感を育む
――中川様はいじめをテーマにしたご著書の出版や、かつて卒業式に出られなかった人などを対象にしたフリースクール「空色スクール」の開校といった、次代の子どもたちに向けた活動に注力されています。また、大橋社長も事業の根幹で、未来の子どもたちの幸せを創ることを大切にされています。お二人にとって、子どもたちをサポートするご活動には、どのような意義があるとお考えでしょうか?
中川 大人ってどのような社会的立場の人でも皆一様に、子ども時代の延長線上を生きていると思うんですよね。やはり、子どもの頃に好きになったり、熱中したりしたものが大人になってもバックボーンとして色濃く残り、その人を形成していきますからね。そうした大人の輝く姿を見た次代の子どもたちが「大人って楽しそう!こうなりたい!」と思ってくれて、そしてその子どもたちが大人になってまた次代の子どもたちに背中を見せて夢を与える、ということの繰り返しが大切だと感じるんです。だからこそ私は、「いかに子どもたちがキラキラワクワクできるか」をテーマにして日々の仕事に取り組んでいます。
大橋 中川さんがおっしゃったとおり、子どもたちが大人になって次代の子どもたちに背中を見せるという良い循環が、日本を形成していると私も感じます。だからこそ、私は世の中に自己肯定感の高い子どもたちを増やしたい。そのためにも、当社の事業を通じて、新婚世代の方々にマイホームに関する知識を提供し、保護者が子どもたちに安心して愛情を注げる環境をつくれるよう力を尽くしているんです。
――大橋社長はこれまでの弊社のインタビューにおいて、「最近の子どもたちの自己肯定感が低下しているのは、子育てにとって最適な環境が整えられておらず、親が正しい愛情の伝え方をわかっていない点にある」とおっしゃり、「こどもを抱っこする機会を増やす」ことの重要性について語ってこられました。
大橋 ええ。これまでの日本では、赤ちゃんが泣いていても、抱き癖がついてしまうから簡単に抱っこをしないほうが良いという風潮がありました。しかし私は、子どもは3歳までの育児の中でたっぷりと愛情を注ぎ、最適なタイミングで抱っこをしてあげることで、大人になっても自然と自己肯定感が高い状態で生きていけるようになるのだと考えています。逆に3歳までの期間であまり抱っこをしてもらえなかった子どもは、大人になっても、「この世界は頑張っても報われないんだ」と、本人も気付かないうちに挑戦する心を失ってしまう可能性があるんです。しかし、ほとんどの新婚夫婦は賃貸住宅を選択することで家計と住環境が不安定になり、「最高の抱っこ」を子どもにしてあげる余裕がなくなるケースが多いんですよ。そこで当社では、新婚夫婦が出産までに最高の育児環境を準備するそのお手伝いとして、家計と住環境を最適化できるマイホームをご提供しているんです。
中川 子どもが3歳になるまでになるべく抱っこをしてあげたほうが自己肯定感が高まるというのは衝撃ですね。私もこれから子どもを育てる立場ですが、まだあまり知識がなくて不安なことばかりだったので、とてもありがたいお話でした。マイホームが育児にとって最適な環境だという点も興味深いですね。
大橋 そう言っていただけると嬉しいです。ただ、赤ちゃんが泣いてからすぐ抱っこをしてしまうのは、「頑張ってないのにご褒美をあげる」ことになってしまうので、おすすめできません。「最高の抱っこ」というのは、ほどよく赤ちゃんを頑張らせてあげた後にご褒美として抱っこをしてあげる、ということだと思っています。そして、赤ちゃんを頑張らせている間は、お母さんもお父さんも笑顔で「頑張れ!」と、子どもの心に届くように投げかけてあげるのが重要なんですよ。その3歳までの繰り返しが、大人になっても高い自己肯定感を保てる大きな要因になると思います。
――子どもの自己肯定感を高めるためにも、育児の正しい知識を保護者に届けるということが重要なのですね。子どもたちにとって保護者とはどうあるべきなのか、ぜひお二人のご意見をお聞かせください。
中川 私は子どもの頃に、「この子の好きなことを伸ばすために」という親の思いから、絵を描く道具や漫画などをたくさんそろえてもらって、そのことが今になってとても役に立っています。だから私も、子どもが好きなことを見つけられるために、いろいろな環境を用意してあげることが何より大事だと思いますね。何を手に取るかはその子の自由なので、あくまで親は「こういうのもあるよ」「こうなったらもっと楽しいかもね」というような情報を与えられる存在であれたら素晴らしいと思います。
大橋 同感です。私も親というのは、深い愛を与えてあげられる余裕を持つことが大切だと思います。また、近年ではジェンダーレスが進んで明確な男女の違いというものは良い意味で失われつつありますが、そのせいか、「母の力」という側面に対しても、徐々にリスペクトがなくなってしまっているように感じます。時代が進んでも、やはり子どもにとって重要なのは母親の存在ではないかと思うんです。なので、もっと世の中全体で母親をサポートできる環境をつくれたら嬉しいですね。
猫も子どもも幸せに暮らせる環境をつくる
――中川様はこれまで、SNS上での問題提起や保護施設への寄付、オリジナルブランド「mmts(マミタス) 」の展開など、保護猫に関する活動を熱心に行ってこられました。日頃どのような思いでこうした活動を続けていらっしゃるのですか?
中川 本当にネガティブで辛かった時期が何回もありましたが、その都度、たくさんの猫たちに助けられてきました。猫は私にとって、兄弟のように、そして親のようにずっとそばにいて支えてくれた存在です。これまでSNSでの発信を通じて出会えたボランティアの方々と連携し、救い出せた命が何十匹もいました。「時代や環境のせいで生きられた命が失われてしまったこともあるけれど、人間が頑張ることで助けられる命も間違いなくある」と私は信じています。直接のボランティアではなくても、最近では保護猫施設がAmazonの欲しいものリストを公開しているので、そこから本当に求められているものだけを購入して寄付する、ということもできるようになりました。そのように一人ひとりの小さな支援が積み重なり、「元気玉」のように大きくなっていくんです。これからも「人も猫もハッピーにしたい」という思いを強く持って、自分にできることに一つひとつ取り組みたいですね。
大橋 素晴らしいお考えだと思います。動物というのは古くから、人と寄り添うようにして生きてきました。先ほどの「最高の抱っこ」の話にも通じますが、動物を抱っこするだけでも大きく幸福度は高まると言われています。そういう意味でも、私はマイホーム販売を通じて、これから生まれてくる子どもたちが気軽に動物と触れ合える環境を提供していきたいと思っています。やはり、賃貸の場合はどうしても猫を飼えないケースが多いですから、その制限のないマイホームの素晴らしさを今後も広めていきたいですね。
――最後にお二人が、それぞれお互いの今後に対して期待することがあればぜひお聞かせください。
大橋 中川さんはこれから母親になり、より子どもたち・猫たちの未来について考えるきっかけが増えると思います。これから生まれてくる子どもたちに明るい未来を残すため、これからもぜひ協力し合いながら、愛のある環境をつくる活動を一緒にできれば嬉しいです。
中川 冒頭にもお話ししましたが、大橋社長は先見の明があり、これまでたくさんの人をサポートしてこられた方で、本当に尊敬しています。今回の対談を通じて、「子どもや猫にとっての幸せって何だろう」と深く考えさせられました。最近はネガティブな話題も多いですが、今後も大橋社長と、「こんなものがあれば子どもは嬉しいかな」「こうしたら猫は喜ぶかな」みたいなワクワクできることをお話しして、それらを一緒に実現していきたいと思います。
取材 / 文:木村 祐亮
撮影:竹内 洋平